ライター:mpcsp079さん(最終更新日時:2013/12/9)投稿日:2013/6/8
バンド理論は謎が多い。どの資料にも肝心なところが省かれているのである。複雑でまとめることが困難です。断片的記述しか出回っていません。
そこで、整理してみようという冒険です。
■他の資料
バンド図と対称性の質問
直接遷移と間接遷移、フォノンのわかりやすい考え方
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半導体の発光、直接遷移
ブロッホ関数、バンド理論、還元ゾーンについて
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ブロッホ定理のわかりやすい解説 2 (ついに出た!)
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ブロッホ定理(Bloch's theorem)のわかりやすい解説 1(ついに出た!)
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など見てもわかりますが、この分野はとりわけ難しい。なかなか全容がわかりません。ここは、もっともやっかいなところなのです。
少し整理してみます。
■本文
エネルギーバンドの説明は2つある。1つは次のようになる。
http://hooktail.sub.jp/solid/differenceOfResistance/
より、
図1
図2
図3
この場合、電子はたいてい各原子に拘束されている。しかし、伝導帯の電子は拘束されていない。エネルギーは位置エネルギー+運動エネルギーである。上のバンドのどこまでかが位置エネルギーかである。
また、もう一つ次のようにもある。原子に拘束されていない電子のブロッホ関数における波数kとエネルギーの関係は図4のようになる。ある波数kのとき曲線に間隔ができる。これをバンドギャップという。
図4
この2つのモデルがどう対応しているのかが問題である。このあたりの記述のある資料を見たことがない。一般に伝導電子では自由電子モデルが採用されるが、価電子バンドはどうか?
図5 伝導バンドの状態密度
たいてい、状態密度は、図5のように書かれるが、これは(全エネルギー)ー(Ec)が、運動エネルギーであることを示している。kをもつ、ということは運動量をもつ、ということだから。ザイマンの本によれば、これは「ファン・ホープの定理」により、特異点であることから出てきたものである。そして、自由電子モデルから出てきたものだともされています。この本には、価電子バンドもブロッホ状態である、つまり遍歴電子モデルで考えるともされています。ということは図6の伝導帯の部分の一番下の部分は価電子バンドであることになる。ということはですよ、伝導帯は、図5のようなk-Eグラフにはならないのではないでしょうか?
図6 以上のまとめ図
図6に以上のことをまとめてみた。どこにも書いていない図である。バンド構造を説明する上の2つのメカニズムがどのようにつながっているのかが示されていない。
一方、ホールについては、図7のように書かれます。この図がまたなんとも不思議なのです。
図7 ホールの状態密度の説明図
つまり、電子の抜けたあと(ホール)も電子のように動き回る。まるで正の電荷を持っている電子のように考える必要があるのである。ホールのホール係数(?)は正であり、これは電子の逆方向の運動という考えでは説明できません。信じられないことですが、正の電荷の運動なのです。
上の話に矛盾しますが、価電子帯での電子が自由電子的(ブロッホ状態)である、ブロッホ関数で表せるとすれば、もしホールがなければ、各電子のkの和は0でしょう(このことの証明は量子力学的計算が必要になります。ここがまた難しさとなっていますね)。そこから電子が1つだけ伝導帯に出て行ったとします。その電子がkを持つとすれば、価電子帯は 0-k=-k という 運動量を持つことになります。つまり、ホールはこのときーkをもつブロッホ関数となります。このとき、価電子帯のエネルギーは出て行った電子のエネルギー分だけ下がりますね。大きなエネルギーの電子がでていけば、価電子のエネルギーはそれだけ下がります。つまり、ホールのエネルギーは出て行った電子の運動エネルギーをEとすれば、ーEとなります(当然、伝導帯に上がった電子は運動エネルギーだけではなく、位置エネルギーも上がっていると思っていますが、そのあたりは不明です)。つまり、ホールのkと運動エネルギーE(あくまでも運動エネルギーのみですね。ここが肝心ですね)の関係は電子と逆になります。これが図7だとお思います。