ライター:mpcsp079さん(最終更新日時:2016/10/25)投稿日:2013/12/21
http://www1.doshisha.ac.jp/~makato/lecture/IC_S1/eff_mass.pdf#search='固体の中の電子の速度と有効質量について'
群速度というわけのわからない用語がでてくるが、この論文は固体の中のブロッホ状態での電子の速度の期待値<v>が、
<v>= (1/h) ∂ω/∂k
であることを、厳密に証明している。初歩的な本では、包絡線の速度として説明されている。
■以下引用する。hと書いてhーとすることにする。
固体の中の電子の速度と有効質量について, 簡単のため,1 次元で考える.波数k のBloch 関数Ãk(x)(= exp(ikx) ¢ uk) における,電子の平均速度v を求めてみよう.運動量演算子をp とおくと,v は
で与えられる.m は電子の質量である.(k に対する平均を取るときは,さらに分布関数と状態密度がわからなければならないが,式(1) は,k の状態での電子の速度を求める,ということである.) まず,演算子から右側に着目し,
と書ける点に注意する.これを(1) に代入すると
となる.さらに(2) に,左からp を作用させて,
であることが示される(各自で確認して下さい).
波動関数ψk に対するSchrodinger 方程式は,
であるが,これに(4) を代入すると,uk に対する次の式が得られる.
この式は,uk に対する,一種のSchrodinger 方程式(Huk = Ekuk)とみなせる.ただし,Hamiltonianはk に依存して,
となる.
さて,Hamiltonian があるパラメータλ に依存するとき,その波動関数Φ とエネルギー固有値E もλ に依存する.このような場合,一般的に次のFeynman の定理が成り立つ。
式(7) から,∂H/∂k = hm^-1(p + hk) となるので,式(3) とFeynman の定理を使うと、
となる.つまり,エネルギーE がk の関数で表されるとき,波数k の状態の電子の平均の速度は,∂Ek/∂kに比例することが分かる.
次に,電子の加速度a を考えてみよう.それには(9) を時間で微分すればよい。
ここで,電子は電場E によって加速されるとすると,dk/dt = -eE/h となる. よって式(10) は、
と書ける。この式(11) をニュートンの法則a = F/m と比較すると,F = -eE より,h^-2∂^2Ek=∂k^2 が質量の逆数に相当するとみなすことができる.この見かけ上の質量を電子の有効質量と呼び,m*で表す.すなわち,
となる.自由電子の場合,Ek = (hk)^2/(2m) なので,m* = m,つまり,有効質量は当然電子の質量に一致する.自由でない電子の場合,周囲のポテンシャルの影響が電子の有効質量の変化に現れていると理解することができる。
Ek のk 依存性によっては(プリントno.5(e) 参照),m*が負になる場合もある.特にほとんど満たされたバンドの場合,バンドの上方にいる電子(m* < 0)の性質が系の性質を決定するので,この概念は非常に重要である.正孔(ホール)や,半導体の振舞いをよく説明することができる。
さらに式(12) より,もしもEk があまりk に依らないとすれば,∂Ek=∂k は非常に小さくなり,有効質量は非常に大きくなることがわかる.電子が原子に強く束縛されている場合,各軌道間の重なりが小さいため,エネルギーバンドの幅が狭く,状態密度が大きくなることが知られている.状態密度が大きいことは,Ek があまりk に依存しないことに対応する.したがって,遷移金属のバンドは,有効質量が非常に大きい場合があり,希土類を含む化合物等で,m* が実際の電子の1000 倍程度になる例もある.このような系を重い電子系と呼ぶ。
■
さらに、結晶運動量hkについては
http://www.ms.osakafu-u.ac.jp/~taguchi/densi/5th.pdf#search='ブロッホ状態+運動量'
の5-4参照
引用してみる。
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http://arpes.phys.tohoku.ac.jp/contents/study/pes.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/光電子分光
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定在波は、速度の期待値が=0なんだよな。右向きと左向きの確率が=だからな・・・
上の厳密な結果は、波動関数の包絡線の速度にほぼ一致している。定在波は包絡線が動かない。