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バイポーラトランジスター(BJT)の原理(メカニズム)

        

ライター:mpcsp079さん(最終更新日時:2016/6/22)投稿日:2013/10/18    
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■電圧と電流の関係

 


            図1 pn接合による電流
 
 
 
  図1はpn接合であり、これにpーー>nの方向に電圧Vをかけると電子とホールは図のように流れる。逆方向に電圧をかけると、電流は少しか流れない。
 
  
 
  p型にはホールがたくさんいる。n型には電子がたくさんいる。
 
 
 
  ショックレイの難しい理論はまず、図1の状態における2つの電流Ie,Ihを計算している。

 

 
にはこの詳細な計算過程が示されているが、あまりも複雑である。しかも、途中で1回大胆な仮定がされている。理論的には説明できない仮定がされている。それは「擬フェルミ準位の仮定」である。この理論では「拡散理論」で進められる。つまり、キャリアの移動はその濃度差によるものなのである。難しく、長い計算の結果、
 
 
 
  電子による電流Ie、
 
  Ie=Ise(exp(V/Vt)-1)
 
  ホールによる電流Ih、
 
  Ih=Ish(exp(V/Vt)-1)
 
 
 
  Vt=kT/q
 
  k:ボルツマン定位数
 
  T:絶対温度
 
  q:電子の電荷
 
 
 
が出てくる。一般には「-1」は略されることが多い。しかし、電流が小さいときはこれは必用である。というのはV=0では電流は=0でなければいけないからだ。以下の考察ではこの「-1」を略すことにする。

  

          図2 ベースの厚さが厚い場合
 
 
 
  図2にベースが厚い場合のトランジスタ(?)を考える。この場合、コレクタにはキャリアは行かずトランジスタにはならない。ところが、図3のようにベースが薄い場合は、コレクタ電流が流れる。

 

 

 

             図3 ベースが薄い場合
 
 
 
  図3において、エミッタからベースに流れ込んだ電子の大半はコレクタに行く。それはベースが薄いからだ。拡散理論によって、エミッタから来た電子は、ベース内の電子濃度勾配により流されていく。そして、大半がコレクタへ到達し、ベースーコレクタの逆バイアスによる空乏層内の電界によりコレクタ内に誘い込まれてしまう(Ie1)。しかし、一部はベース内のホールと再結合してしまい、コレクタにはいけない(Ie2)。また、ベースからエミッタに流れ込んだホール電流Ihはベース電流となる。
 
 
 
  つまり、コレクタ電流は
 
   Ie1
 
  ベース電流は
 
   Ie2+Ih
 
 
 
となる。この比がβである。βを上げるにはIe2とIhを小さくすることである。Ihは、エミッタの不純物をベースに比べて大きくすることで、小さくしている。おおざっぱに言って、それぞれの項はすべて、上のpn接合の電圧ー電流の関係があるから、Vbeをベースーエミッタ間電圧とすると、コレクタ電流Icとベース電流Ibは、
 
 
 
  Ic=Isc*exp(Vbe/Vt)
 
  Ib=Isb*exp(Vbe/Vt)
 
 
 
となる。この動作は、ibが増幅されてIcとなるのではなく、エミッタからコレクタへ向かう電子流をVbeが遠隔制御している、と考えたくなるメカニズムです。また、エミッタ電流とコレクタ電流の比をα(<1)とします。

 

■蓄積容量


             図4 等価図


  n型半導体の中のホールやp型半導体の中の電子、つまり少数キャリアの流れは、濃度差による拡散で説明されています。つまり、流れは濃度差によって可能となる。これら少数キャリアは、流れながら多数キャリアと再結合して消滅していきます。上の式はこれら複雑な拡散方程式を立て、解くことによって出てきます。つまり、少数キャリアの濃度は接合部で大きく、離れるに従い小さくなります。 
 
  npnトランジスタのベース内にも少数キャリアの電子の濃度分布が形成されています。とうぜん、エミッタ側にも、少数キャリアであるホールの濃度分布ができる。 
 
  つまり、定常状態になる前に、まずこの濃度分布が形成されなければならない。ここで、電荷中性の仮定、というものがある。これは、どこにおいても電荷は平均的には=0でなければいけない、という仮定です。つまり、電子が多いところにはホールも対となって同じ数だけ存在しなければならない。ホールの電荷は+であるからである。これは、法則ではなく仮定である。 
 



                  図5 蓄積

     

     

                図6


  ということはベース内の少数キャリアの電子の分布ができたとき、この電子はエミッタから供給されたものではあるけれど、それにあわせて「電荷中性の仮定」により、ホールが電子に対となってつき従わなければならない。このホールの流れは、ベース電流によってのみもたらされる。つまり、このベース内の電子分布量の電荷は、これに対応するベース電流によって形成される。つまり、容量Cがあるのと等価になる。これをベース蓄積容量という。 高周波で問題となる。

 
 当然、エミッタ内にもホール濃度分布が形成されるから、容量となる。しかし、図5、6からベースの電子が、蓄積容量で支配的である。Ceは無視できる。


 
 
  

 
以下は参考です。

 

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