SonofSamlawのブログ

うひょひょ

P型半導体の正のホール係数の不思議

ライター:mpcsp079さん(最終更新日時:2017/2/21)投稿日:2015/10/23    

 

反対むきの電子の動きでは説明できない、P型半導体の正のホール係数の不思議。

回答はホールの周辺の電子の有効質量が負になることによる。
 

 

最近の質問

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14170568174

 

 

■質問

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10142541635

 


p型半導体のホール効果について
図はp型半導体中の電子の配置を模式的に表し、穴のあいている場所はホールのつもりです。Siとアクセプターンの原子核は動かないので省略しています。 

    図のようなp型半導体に紙面奥向きの磁場が加わっていて、下向きの電流を流したとき、ホールは右向きのローレンツ力を受けて流路の右側に集まり、相対的に流路左側は負に帯電して右向きの起電力が生じる、と説明されると思います。

ホールは実体ではないので、p型半導体中でも実際に移動しているのは電子だと思います。電子が図のどこかのホールの下方のどこかから供給されてそのホールを埋めるとき、移動する電子は移動に際して右向きのローレンツ力を受ける筈です。そうすると、ホールを埋める電子は平均的にはホールの左下から供給されようとするのではないかと思いますが、そう考えてしまうとホールは左向に寄ろうとすることになってしまいます。

p型半導体に起きるホール起電力を、p型半導体中で実際に移動している電子が受けるローレンツ力から説明することはできるでしょうか? 

 

           

 

■質疑応答

できません。ホールを+の電荷を持つものとした結果が実際と合います。
だから、Pとnでは同じ電流でもホール係数が違います。

http://surf.ml.seikei.ac.jp/~nakano/exptext/14Hall.pdf#search=' 


 

左を電子の動きと考えると、右と同じで電子は右により電界はn型と同じになるはずですが、実際は逆です。
これはホールを電子の動きではなく、正の電荷が動いていると考えなくては説明できません。
ここが肝です。 

 

ありがとうございます。
ホールがローレンツ力を受けると考えれば事実と合う、というのはその通りだと思うのですが、しかしホールは実体ではないと思います。p型半導体であっても実際に動いているのは電子ではないでしょうか。実体ではないホールが力を受けるという説明は、何とも理解できないので質問させて頂きました。何故ホールがローレンツ力を受けると考えると辻褄が合ってしまうのでしょうか? 


 

>実体ではないホールが力を受けるという説明は、
 >何とも理解できないので
誰もが悩むところです。
これはホールの有効質量とかの話からそうなります。
 詳しくは固体内のブロッホ状態、ブリュアンゾーンなどによる解析から理論的に説明されます。ここまでいかねば説明できません。

 


たとえば
http://ou812.web.fc2.com/Semi/2_4.html
から引用
ーーーーーー
 すなわち、伝導帯の低エネルギー付近では、電子の有効質量は正となり、充満帯の高エネルギー付近では有効質量は負となっているのである(負の有効質量)。単に「質量」ではなく、「有効質量」などと言ったのもこのような都合にあわせるためであると思われる。固有半導体では禁止帯付近での電子とホールのやり取りのみが問題となるので、この有効質量の正負反転を考慮しなければならない。
ーーーーーー
 ホールは充満帯の高エネルギー電子の振る舞いですから有効質量は負になります。そこで伝導帯底の電子とは動きが異なってくるのです。

 参考
 固体の中の電子の速度と運動量
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n237076

上の資料からの引用
ーーーーーーーーーーーー
 となる.自由電子の場合,Ek = (¹hk)2=2m なので,m¤ = m,つまり,有効質量は当然電子の質量に一 致する.自由でない電子の場合,周囲のポテンシャルの影響が電子の有効質量の変化に現れていると理 解することができる.Ek のk 依存性によっては(プリントno.5(e) 参照),m¤ が負になる場合もある.特にほとんど満た されたバンドの場合,バンドの上方にいる電子(m¤ < 0)の性質が系の性質を決定するので,この概念
は非常に重要である.正孔(ホール)や,半導体の振舞いをよく説明することができる.
さらに式(12) より,もしもEk があまりk に依らないとすれば,@Ek=@k は非常に小さくなり,有効 質量は非常に大きくなることがわかる.電子が原子に強く束縛されている場合,各軌道間の重なりが小さいため,エネルギーバンドの幅が狭く,状態密度が大きくなることが知られている.状態密度が大き いことは,Ek があまりk に依存しないことに対応する.したがって,遷移金属のバンドは,有効質量が非常に大きい場合があり,希土類を含む化合物等で,m¤ が実際の電子の1000 倍程度になる例もある.
このような系を重い電子系と呼ぶ.]
ーーーーーーーーーーーーー
以上引用

 


つまり、ホールの原因になっている電子は充満帯の上部にいます。
つまり、質量は負。だからローレンツ力は逆向きになります。


詳しい解説をありがとうございます。
バンドの上方にいる(ホールを動かしている)電子が負の有効質量を持つからローレンツ力が逆向きに働く、ということなら、同じ電子に働くクーロン力は、何故逆向きにならず、図の上向きに働くのでしょうか?

 


>、同じ電子に働くクーロン力は、何故逆向きにならず、
 >図の上向きに働くのでしょうか?

もう少し詳しくお願いします。意味がわかりません。

 


ありがとうございます。説明不足ですみません。

 図でホールはローレンツ力による右向きの力を受けているのと同時に、外部電界による下向きのクーロン力を受けて、下方向に流れていると説明されると思います。
ホールは実体ではないので、ホールが下向きに流れているということは、ホールを作っている充満帯の電子が外部電界による上向きのクーロン力を受けて、上向きに移動しているということではないかと思います。

 一方、「充満帯の電子は負の質量を持つ」という理由で充満帯の電子に働くローレンツ力が逆向きに働くのなら、外部電界によって充満帯の電子に働くクーロン力も同じ理由で逆向き(下向き)に働くことになってしまうのではないか、と思いました。

 

 


良くわかりました。
そもそも、
 充満帯の電子の流れが電界によるのであれば、伝導帯とは逆になるのでは?
ということですか?
 電界による場合には、ということですか?

 

 

ありがとうございます。
 電界による「場合には」というよりも、

p型ホール素子の充満帯の電子は外部電界による図の上下方向のクーロン力と磁場による図の左右方向のローレンツ力を両方受けている訳で、
 「有効質量が負」という理由でその2つの力のうちローレンツ力の方だけが逆転するのは何故なのか、という疑問です。

 


この場合、キャリアが上下に動くのは電界ではなく、拡散によるものです。濃度差によって動くのです。
ダイオードでも内部でのキャリア電流はドリフトではなく拡散によるものとされています。
そう考えると、どうでしょう。

http://semiconductor.seesaa.net/article/279273.html
http://www.buturigaku.net/sub02/Glossary/Contents/Semiconductor/Dif...

 


半導体内部は端子に電圧をかけた場合でも、電界は=0になっているとおもいます。
 金属では、電子は電界で動くのだと思います。
これが大きな違いなのかなと思います。


 

P-n接合でもP-金属接合でも、キャリアが接合を移動するのは電界ではなく濃度差によります。つまり、かけた電圧により、境界でキャリアの濃度差ができます。これはフェルミディラック分布によるものです。それによってキャリアは流れます。


 

ありがとうございます。ホール素子の中の電流はドリフト電流ではなく拡散電流だということですね。Metal-P-Metalの構造でMetal-PかP-Metalのどちらかの接合部に電界が集中するということですか?ちょっと不思議な気がします。

 


どちらにもかかっている、ということでは?

 

 

 

■質問2

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14151720134


半導体のホール効果について質問です。キャリアが正孔の場合と電子の場合で受けるローレンツ力が反対になるのはどうしてですか?  

    正孔の場合は、実際には正の電荷を持つ原子核が動くはずもなく、結局電子が動いていると思うのですが、そうなると受けるローレンツ力が同じ方向となりませんか?どなたか分かりやすい回答をお願いします。


間違えました。ローレンツ力が逆になるのではなく、正孔でも電子でも同じ方向にローレンツ力が働くのでホール電圧が逆になるのではないかという質問です。正孔が動かず電子が反対方向に正孔を埋めていくという前提です。
 


 

■回答

結論はホールを形成するバンド(ほぼ電子で満たされている)の空席(バンドの頂点付近)付近の電子の「有効質量」は負であることによります。この電子は電界Eに対して、Eの方向にうごきます。
これを理解するには、バンド理論を理解しなくてはいけません。

たとえば
固体物性論の基礎のP178に書いてあります。
 帰結として、ほぼ満された充満帯の電子群の動きは少数の正電荷の動きと等価になることが証明されています。
 図書館などで見てみてください。


 

         

 

         

ありがとうございます。初めてきちんと説明してもらいました
とても理論は難しいですが、勉強してみようと思いました。
きちんとした回答ありがとうございました。