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オペアンプLM324の解析 miranda

ライター:miranda17jpさん(最終更新日時:2014/1/30)投稿日:2013/11/11

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                   【図1】


■初段(トランスコンダクタンスGm段)
Q17とQ21、Q18とQ20
は差動増幅器である。
差動増幅器の基本的な動作については、以下の知恵ノートを参照ください。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n230463

差動利得は一般に、Ad = -gm*RCだが、図1ではRCが電流源なので、利得は非常に大きい。
差動増幅器はペアBJTのVb'eが相殺されるので、温度によるVb'eの変化影響が小さくなり、CMRRが大きいので、同相ノイズの影響も除去できる。さらに、その後の段では、Vb'eはすべてのBJTで同じように変化するので、影響は小さくなる。

以下の図2を見ると分かるとおり、

Q-18とQ-20はマルチコレクタBJTで、マルチコレクタBJTのコレクタには、それぞれのコレクタに対応したエミッタ面積の比に応じた電流が流れる。
この2つのマルチコレクタBJTは、一人三役を兼ねている。
Q18-1とQ20-1の差動増幅器と、Q18-2とQ20-2のカレントミラーである。
Q17とQ21に差動信号を入力したとき、流れる電流をQ18-2とQ20-2を介してQ18-1とQ20-1にコピーして渡す仕組みである。
また、BJTを2段重ねにしているので、Vb'eがかさ上げされている。これによって、どちらの入力がvEEになっても、正常動作ができる。Q17とQ21のコレクタには何もついていないので、ベースはVeeまでOKというわけである。
   

                    【図2】

図1のQ3とQ4は、カレントミラー回路で、電流をコピーしてほかのBJTに渡すために用いている。最初私は、バイアス安定化の為に使っているのかと考えましたが、そういう目的ではないようです。
バイアスは、図1の電源部(着色部分)から、温度とVccにあまり依存しないものが与えられる。

カレントミラー回路の基本動作については、以下のノートを参照ください。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n230472

図2を見ると、Q18-2とQ20-2もカレントミラーとして機能していることが分かる。
差動信号が入力された時、Q20-1から流れ落ちる電流と、Q3からQ4にコピーされてくる電流は、向きが反対で大きさが同じである。
そして、お互いに電流源なので、そのままの電流を流そうとするので、流れてきた電流は、合流してQ5のベースへ行くしかない。つまり、両電流の差が、Q5のベースへ行く。
よって、初段は、差動入力信号電圧を電流に変換していることが分かる。つまり、gmが定義できる。
Gmの考察は
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n236805
を参照願います。

■中段
図3は、中段の簡略図である。
  

                      【図3】

Q5とQ6、およびQ9の後段
は、エミッタを出力にしているので、エミッタフォロワである。
エミッタフォロワの特徴は、コレクタに何もつけずに、コレクタ接地していることで、入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低く、また、出力がベース電圧に追従して動く。
直感的に、REが大きいほど入力インピーダンスが大きくなるので、それを電流源にしたのだから、入力インピーダンスは非常に大きくなることが分かる。Q26はQ8(ダイオード)から、電流をコピーする電流源である。
このようにして、高いインピーダンスで電圧を受けるので、電流が流れない。
ということは、次段のインピーダンスも高くできる。

Q6は、Q9のVb'eは0.6Vでなくてはならないので、逆算してQ5のベースが0Vにならないように、図のように取り付ける。
Q6がなかった場合、
Q9のVb'eは0.6Vでなくてはならない→Q5のVb'eかさ上げされたところの電圧が0.6V→Q5のベースが0V→Q4のコレクタが0V
となってしまうので、BJTが動作しなくなってしまうからである。

Q9の後段は、エミッタフォロワなので、入力インピーダンスが高く出力インピーダンスが低いため、Q9のコレクタ電圧を高インピーダンスで受けて、出力インピーダンスが低いから、出力からたくさん電流を取り出せる、というわけである。

 
Q9はコモンエミッタなので、利得は、rb等省いて要所だけ書くと
-gm*RC
となる。Q9はそのRCが電流源なので、利得が非常に高くなることが分かる。
そのため、ほんのわずかのvbeの変化に大きく反応する。
Q9の後段がエミッタフォロワなので、高インピーダンスである。
Q5はREが電流源のエミッタフォロワなので、Q5のベース抵抗が非常に高い。電流がほとんど流れない。
以上の理由から、Q4のコレクタ電流icは、分流することなくほとんどCに吸い取られる。
すると、Cの両端の電圧vcは、トランスコンダクタンス段から受けた電流をほとんど吸い取ることから、
vc = Gm*vd/jωC
という簡潔な特性にすることができる。ここで、Gmは、初段のトランスコンダクタンス、vdは差動信号電圧である。
このvcが、Q9のコレクタ電圧なので、この段はGm段から受けた電流を電圧に変換していると見ることができる。
初段のGmは非常に高いので、オペアンプ全体のゲインも非常に高くできる。
このvc = Gm*vd/jωCという特性は後述するが、NFをかけた時安定した位相余裕が得られる特性となっている。

Q9の後段は、エミッタフォロワなので、入力インピーダンスが高く出力インピーダンスが低いため、Q9のコレクタ電圧を高インピーダンスで受けて、出力インピーダンスが低いから、出力からたくさん電流を取り出せる、というわけである。

●CによるNF(負帰還)
Q5はREが電流源のエミッタフォロワなので、入力インピーダンス、つまりベース抵抗が非常に高い。
よって、Q4からの電流によりQ5のベース電圧は大きく変化する。
RCが電流源になっているQ9のゲインは非常に大きいので、Q5のベース電圧の僅かな変化でも、Q9のコレクタ電圧は非常に大きく変化する。Q9のコレクタ電圧はそれでも有限なので、Q5のベース電圧の変化は、Cを介してCがQ4の電流を全て吸い取ることで、ほぼ0に抑えられる。Cがないと、Q5のベース電圧が変化してしまう。
これが、負帰還である。
Q4の電流をCが全て吸い取った結果、Cの電圧はQ9のコレクタ電圧となる。
オペアンプ自体に負帰還をかけて使う場合にも、おなじことが言える。
オペアンプのゲインが非常に大きいので、負帰還をかけると誤差がほぼ0に抑えられる。誤差は厳密には0ではないのだが、0とみなして使える、これがバーチャルショートである。

C周りの小信号等価回路を書くと、以下の図4になる。
  

          【図4】

Q20-1、Q4のコレクタは、小信号に対して接地されるので、
図4のRiは、Q5の入力インピーダンスと、Q20-1、Q4のコレクタ抵抗との並列抵抗となる。同様に、Q9のコレクタも小信号に対して接地されるので、Rcは、Q9のコレクタ抵抗と後段のエミッタフォロワの入力インピーダンスとの並列抵抗となる。
gmはQ9のgmで、Q9はコモンエミッタなので、小信号に対しては入出力が分離できるので、図4のようにRiと電流源-vi*gmは分離される。
Cのインピーダンス1/jωCは、zcと置く。
図4より、
icは、-vi*gmとRcを流れる電流が合流したもので、icは図4の方向を正としているので、Rcを流れる電流は-vo/Rcとなるので、
ic = -vi*gm -vo/RC・・・・①
Cの電圧はvo-viなので、
ic = (vo - vi)/zc・・・・②
Riには、iとicが合流して流れ込むので
vi = Ri*(ic + i)・・・・③
が成立する。

①②から、
(vo-vi)/zc=-vi*gm - vo/Rc
vo(1/zc + 1/Rc) = vi(1/zc - gm)
vi = vo(1/zc + 1/Rc)/(1/zc - gm) ・・・・④
②③より、
vi = Ri*((vo-vi)/zc + i)
vi = Ri*vo/zc - Ri*vi/zc + i*Ri
vi(1 + Ri/zc) = Ri*vo/zc + i*Ri
vi = Ri*vo/zc(1 + Ri/zc) + i*Ri/(1 + Ri/zc)・・・・⑤
④⑤より、
Ri*vo/zc(1 + Ri/zc) + i*Ri/(1 + Ri/zc) = vo(1/zc + 1/Rc)/(1/zc - gm)
vo(1/zc + 1/Rc)/(1/zc - gm) - Ri*vo/zc(1 + Ri/zc) = i*Ri/(1 + Ri/zc)・・・⑥
ここで、
能動負荷RcとRiは非常に大きいので
1/zc >> 1/Rc
1 << Ri/zc
とすると、⑥は
vo((1/zc)/(1/zc - gm) - 1) ≒ i*zc
vo*zc*gm/(1 - zc*gm) ≒ i*zc
ここで、1 << zc*gmなら、
vo ≒ -i*zc = -i/jωC・・・⑦
よって、
vo = -Gm*vd/jωC
(vdは差動入力信号電圧、Gmは初段のトランスコンダクタンス)
が証明できた。位相補償コンデンサとして機能していることが式からも分かる。

ここで、⑥において、信号がDCすなわち周波数が0だった場合について考える。
ω=0なので、zcは∞となる。
すると⑥は
vo( (1/Rc)/(-gm) -Ri/zc) = i*Ri
vo*(1/-Rc*gm) = i*Ri
vo = -i*Ri*Rc*gm = -Gm*vd*Ri*Rc*gm・・・・⑧
となり、これがDCゲインとなる。
直感的にもわかるが、⑧より、DCゲインは周波数によってゲインが変わらないので、ボーデ線図では横に平らなグラフとなり、周波数が出ると⑦になり、ゲインが直線的に落ちる。この境目が、極である。
   

          【図5】

以上の計算は、非常に面倒である。そこで、ミラー近似を使うと、周波数特性が楽に求まる。
Cはミラー容量に酷似していて、極は非常に低い周波数なので、ミラー近似ができる。
以下の知恵ノートの図3より、
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n231974
i = vbe/Rπ - (vo - vi)jωCμ = vbe/Rπ + jω(1 + gm*Rc)Cμ*vbe
vo = -gm*Rc*vbe
これを図4に当てはめると、s = jωとして
i = vi(1/Ri + s*gmRcC)
 ≒ vbe*s*gm*Rc*C
vo = -gm*Rc*vbe
    = -gm*Rc*i/s*gm*Rc*C
    = -i/sC
    = -Gm*rd/jωC
となり、式⑦に一致することが導ける。

■電力増幅段
Q11とQ13はプッシュプル回路で、電力増幅器となっている。Q11とQ13には逆相の電流が流れるので、Q13にベース電流が吸い込まれる時は、Q11からベース電流が出て行き、両BJTから下向きの電流がたくさん流れ、逆の場合は上向きの電流がたくさん流れるという仕掛けである。
このプッシュプルは、C級アンプに該当する。このアンプはA級のように常にたくさんのバイアス電流を流しているわけではないので、電力効率が良い。ただ、極性が反転するところで、クロスオーバー歪が生じやすい。一般には、これを防ぐために、両BJTの間に抵抗やダイオードを入れたり、
バイアスを少し多めに流したりする。
通常のオペアンプはAB級で、どちらのトランジスタにも電流が流れる状態が存在する。切り替える時、両方に流れるようにしてある。
しかし、LM324ではC級で、Q13とQ11に同時に電流が流れるようにはなっていない。よって、切り替わるとき、両BJTが死ぬところがあり、大きな歪を出す。
ただ、LM324には、Q10の電流源があるので、吸い込み電流が小さいときは、pnpBJTのQ11は使わなくてもこれで吸い込み電流が取れるので、クロスオーバー歪がそもそも起きない。構成としては、REを電流源Q10とした、npnのエミッタフォロワ出力段とおなじと考えることが出来るからである。Q10によって、上のnpnにバイアス電流が与えられ、電流の吸い込みが出来るからである。
この吸い込み電流は10μA程度である。
また、別の対策として、Vout-VEE間に、抵抗Roeをつなぐという手段がある。これも、pnpをバイパスしてこの抵抗にバイアス電流を流し、吸い込み時に下のpnpは使わずに抵抗Roeから電流を吸い込むようにする。
つまり、上のnpn単体のA級電力増幅器にして使うのである。

よって、吸い込み電流が小さければ、上記の手段で、クロスオーバー歪が起きないようにできる。
問題は、吸い込み電流が大きい時である。
Roeと吸い込み電流が大きくなって、pnpのVb'eを超えてしまうと、結局pnpが動作するので、クロスオーバー歪が出てしまう。
そうかと言ってRoeを小さくすると、定格電流(10mA)を超えてしまうおそれがある。

OUT段は大信号で動く。つまり、プッシュプルで使った時(Roeを入れないとき)、コレクタ電流は最大から0まで変わる。これに応じてVbe(大信号だから大文字)も変わる。つまり、波形は前段からINされたものからずれる。つまり、ひずむ。この歪ををINされた波形との差とすると、OUT段にこの歪成分dが加算されたという風に考える。それはdをOPAMPのゲインAvで割ったものd/Avはvdに加算されたと考えてもいい。これをIN換算歪という。vdとd/Avの比が、歪率を決める。

Avは大きいので、dがかなり大きくても歪率は小さくなる。