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うひょひょ

オペアンプOPAMP LT1037の回路図と回路解析

ライター:mpcsp079さん(最終更新日時:2016/5/13)投稿日:2016/5/13    
 
 
LT社のオーディオ用(?)低ノイズ、低歪のOPAMP、LT1037の回路と動作を調べた。

 


■データシート

http://cds.linear.com/docs/en/datasheet/100737fbs.pdf

LT1037 - 低ノイズ、高速、高精度オペアンプ 
 
特長 
保証ノイズ:10Hz で4.5nV/√Hz
保証ノイズ:1kHz で3.8nV/√Hz
ノイズ:0.1Hz~10Hz で60nVp-p(標準)
保証電圧利得:RL = 2kで7,000,000(最小)
保証電圧利得:RL = 600Ωで3,000,000(最小)
保証オフセット電圧:25μV(最大)
保証温度ドリフト:0.6μV/℃(最大)
保証スルーレート:11V/μs(最小)(LT1037)
保証CMRR:117dB(最小)
概要 
  LT1007/LT1037シリーズは、(400Ω抵抗のノイズよりも低い)2.5nV/√Hzの広帯域ノイズ、2Hzの1/fコーナー周波数、60nVp-pの0.1Hz~10Hzノイズといった、今日モノリシック・オペアンプに対して達成可能な最小のノイズを実現します。このような低ノイズに加え、10μVのオフセット電圧、0.2μV/℃のドリフト、130dBの同相および電源除去比、5以上の閉ループ利得で安定する非補償のLT1037における60MHzの利得帯域幅積などの卓越した高精度および高速仕様を実現しています。

  LT1007/LT1037の電圧利得はきわめて高く、±10Vに2kΩの負荷をドライブする場合は20,000,000、600Ωの負荷をドライブする場合は12,000,000です。 

  デバイスの設計、製造プロセス、テストでは、各種の主要パラメータの全体の分布を最適化することに重点が置かれました。その結果、最も低コストのグレード(LT1007CおよびLT1037C)でも、同等グレードの競合アンプと比べて格段に優れた仕様を実現します。 

  下図に示す正弦波発生器アプリケーションは、LT1037の低ノイズおよび低歪み特性を活かしたものです。 

 

 

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■全体像

 


             図1 等価回路図

    


             図2 オープンループf特

 

 


      カンパッケージ

 



            図3 パッケージ

 


■ブロック図

  図3をブロック図にしたものが図4である。ここで注意は、A2は負帰還されていない。正帰還、もしくはフィードフォーワード動作である。


       

     図4 ブロック図(RAはQ23のB-E間抵抗)

 


  図にはA1,A2,A3のトランスコンダクタンスをIcから割り出して書き込んである。図4をさらに簡略化したものが図5である。


    

     図5 簡略ブロック図(RAはQ23のB-E間抵抗)

 


■細部の検討

 

          図6 A1のOUT部分の等価変換

 

 
   図4を図6により、書き直し図7に示す。

  

           図7 さらにわかりやすく書いてみた

 


  図7のA2部分の説明が図8である。

    

     

               図8 A2の動作

 


この図で、e1,e2とvoの関係は、


    vo=ー(e1-e2)(R2/R1)+v2

となる。図7で、A2,A3の回路で考えると、

    i1=-((v+)-(v-))*Gm1

    i2=((v+)-(v-))*Gm1

であり、また、

    vo=ー(i1*R1-i2*R2)(Z3/R1)+i2*R2


であるから、i1,i2に上の式からv+.v-を代入すれば、

    vo=K*((v+)-(v-))

の形になっていてv+とv-の差動増幅になっていることがわかる。

 

 

  ここで、A3の動作を図9で調べる。 

 


 

     


               図9 A3の動作

 


  i=vi/RA+(vi-vo)/Z

  (vi-vo)/Z-vi*Gm=vo/RL

 


   i+vo/Z=vi/RA+vi/Z

   i+vo/Z=vi(1/RA+1/Z)

   vi=(i+vo/Z)/(1/RA+1/Z)

   Za=1/(1/RA+1/Z)

として、

   vi=(i+vo/Z)Za

 


   ((i+vo/Z)Za-vo)/Z-(i+vo/Z)Za*Gm=vo/RL

 vo/RL

 =iZa/Z+voZa/Z^2-vo/Z-i*Za*GmーvoZa*Gm/Z

 vo(Za/Z^2-1/ZーZa*Gm/Z-1/RL)

   =i(-Za/Z+Za*Gm)

  vo/i=(-Za/Z+Za*Gm)/

         (Za/Z^2-1/ZーZa*Gm/Z-1/RL) 

ここで、条件(Gm大)を満たせば、

    vo/i≒ーZ

となる。

 


  もし、A2の使い方のように正帰還であるとすればどうなるか。A3のIN端子が仮想接地であるとすれば、

   RL-->0

なので、

   io=vo/RL

   -Gm2-->Gm2(正帰還)

として、

    io/i=vo/i=(-Za/ZーZa*Gm2)/

     (RL*Za/Z^2-RL/Z+RL*Za*Gm2/Z-1) 

        =Za/Z+Za*Gm2

        =Za(1/Z+Gm2)

        =Za*Gm2z

  ここで、Za/Zはフィードフォーワードの項である。Gm2は1/Zだけ増えたことと等価である。この電流は周波数が上がるにつれて上がるので位相補償になるのかもしれない。この場合、10MHzくらいまで、等価Gm2zは低域から20dB/decで上昇する。低域のゲインはA2(Gm2)が受けもつ。

  また、正帰還による発振は振り切れだから、全体のNFBにおいては問題ない。開ループ伝達関数

      D/(s-a)

による閉ループ伝達関数は、

      D/(s-a)/(1+kD/(s-a))

      =D/(s-a+kD)

ここで、

       a<kD

なら安定である。