SonofSamlawのブログ

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バイポーラトランジスタ(BJT)のTINA TI(SPICE)モデルについて

 

 

ライター:miranda17jpさん(最終更新日時:2014/2/12)投稿日:2014/1/5    
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    オペアンプLM324解析関連の知恵ノート一覧 については、以下の知恵ノートにまとめてあります。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n234431

以下の知恵ノートで、オペアンプLM324の解析を行っているのですが、回路シミュレータ(TINA TI Ver9を使用しました)で実験もしています。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n234431
BJTの持つ寄生容量によって周波数特性が変わるため、ここでは、BJTの寄生成分について記載するとともに、回路シミュレータで特性を調べました。

 


図1に、BJTの完全なハイブリッドπ型モデルを示す。
図1は、以下より拝借しました。
http://users.ece.gatech.edu/~alan/ECE3040/Lectures/Lecture20-BJT Small Signal Model.pdf#search='Small+Signal+BJT+Model'

                【図1】

■寄生抵抗

BJTには、トランジスタ上部にあるコンタクト部分と、エミッタの下にある活性ベース領域との間にあるシリコンの抵抗に起因する寄生抵抗がある。
●rb
BJTの寄生抵抗のひとつ。
ベース広がり抵抗と呼ばれるもので、一般には50~500Ωである。
ベース幅が非常に狭いことにより起こる、多数キャリアがベースを通過することによって生じる電圧降下である。
手持ちの回路シミュレータ(TINA TI Ver9)のパラメータでは、
「base resistance」
に該当すると思われる。
LM324解析の実験に使った
npnでは、10Ω
pnpでは、10Ω
がデフォルト値である。
LM324の解析に使ったnpn BJTは、実在のBJTではないと思われる。
pnpは、「2n2904」を用いた。

●rc
これも、BJTの寄生抵抗のひとつで、コレクタコンタクト部分と、活性ベース領域間のシリコン抵抗である。
Icによって、その大きさが変化する。
一般には、20~500Ωである。
TINA TIのパラメータでは、
「collector resistance」
に該当すると思われる。
LM324解析の実験に使った
npnでは、1Ω
pnpでは、1Ω
がデフォルト値である。

●rex
エミッタ抵抗で、一般には、1~3Ωの抵抗成分。
Icが非常に大きい時に重要になってくる。
TINA TIのパラメータでは、
「emittor resistance」
に該当すると思われる。
LM324解析の実験に使った
npnでは、305mΩ
pnpでは、1.51Ω
がデフォルト値である。

■寄生容量
●Cπ
以下の知恵ノートに記載しました。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n220772
TINA TIのパラメータでは、
「forward transit time」と
「b-e zero bias. cap.」
により、決定される。
「forward transit time」とgmの積が、支配的な成分である。
●Cμ
以下の知恵ノートに記載しました。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n221944
TINA TIのパラメータでは、
「b-c zero bias. cap.」
により決定される。
LM324解析の実験に使った
npnでは、10.4pF
pnpでは、19.7pF
がデフォルト値である。

●Ccs
よくわからない、保留中。バイブル本の2章勉強中。

■入出力抵抗
●rπ
以下の知恵ノートに記載しました。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n221639
●ro
以下の知恵ノートに記載しました。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n221639

 

●rμ
コレクタ-ベース抵抗。
これは、Vceにより生じる。
Vceが大きくなると、コレクタ-ベース間空乏層が広がり、ベース幅が狭くなる。
よって、ベースに存在する少数キャリアが減るため、ひいてはIbが減ることになる。
つまり、電圧Vceが大きくなるほど電流Ibが減ることから、
rμ = ⊿Vce/⊿Ib = (⊿Vce/⊿Ic)(⊿Ic/⊿Ib)
とモデル化出来る。
Ibは、再結合成分Ib1とエミッタへのホール注入成分Ib2の和であるが、ここでは、Ibは全てIb1で成り立っていると仮定している。
すると、上式は、
rμ = ro*β
と近似出来る。

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◎回路シミュレータによる、BJTの特性調査
ここでは、LM324の周波数特性に影響を及ぼす寄生成分CπとCμについて、回路シミュレータを使って調べた。
図2の回路で実験をした。

 


                  【図2】


設定をデフォルトのままにして、周波数特性を調べると、以下の図3-1となった。
この状態から、transit timeのみを0にした時の結果は、以下の図3-2となった。
寄生容量のみを0にした時の結果は、以下の図3-3となった。
両方0にした時の結果は、以下の図3-4となった。
これらの結果より、transit timeをなくしただけでは、f特は変化せず、寄生容量を0にして初めて効果が出ることが分かる。
 

                【図3-1】
 

               【図3-2】
   

              【図3-3】
 

               【図3-4】

■Cπ(ベース-エミッタ間寄生容量)とforward transit time(τf)
以下の知恵ノートより、
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n220772
Cπ = τf*gm + Cje
Cjeは、ベース-エミッタ間空乏層容量
が成立するはずである。

まず、
forward transit time 
b-c zero bias cap. 
b-e zero bias cap. 
を0に設定し、
reverse transit time 
だけをもとのまま(69ns)にして、実験をしたところ、f特は、以下の図4-1になり、
図2のような使い方においては、reverse transit time はf特には関係しないことが分かる。
予想通りの結果である。
 

               【図4-1】

次に、τf*gmについて調べてみる。
まず、図2の回路のバイアスだが、これは800μAになるように設計をした。
(回路シュミレータで測定したところ、793μAだった。)
よって、
gm = 800μA/26mV = 30.77 x 10^-3
である。
b-c zero bias cap. 
b-e zero bias cap. 
を0に設定し、
forward transit time を 1μs
に設定してみた。

ib=vbe*jω*Cπ
ic=gm*vbe
β=ic/ib=gm/(ω*Cπ)
より、Cπ≒Cbとすれば、ftはβ= 1となる周波数であるから、
ft ≒ gm/(2πCb)
と書ける。
ft = gm/2πCb
     = gm/(2π*τf*gm)
     = 1/(2π*1μs) = 0.16 x 10^6 = 160kHz
で、160kHzのsine波を入力として与えてみたところ、
ib = 496nA、ic = 493nAで、ic/ib = 1となった。
これも、予想通りの結果となった。  

Cb=τf*gm
より、
ft ≒ gm/(2π*τf*gm)=1/(2π*τf)
この、ft = 1/(2π*τf)
という関係式が重要である。
データシートにftが記載されていれば、上述より、gmとCπが求まることが分かる。
τfは素子そのもので決まるパラメータで使用条件にはよらないので、ftは素子そのもので決まることになる。つまり、使用条件にはよらない。しかし、Cbやgmはコレクタ電流で変わる。