ライター:miranda17jpさん(最終更新日時:2013/12/29)投稿日:2013/10/16
図1に、BJTの完全なハイブリッドπ型モデルを示す。
図1は、以下より拝借しました。
http://users.ece.gatech.edu/~alan/ECE3040/Lectures/Lecture20-BJT Small Signal Model.pdf#search='Small+Signal+BJT+Model'
●ベース蓄積容量Cbと、ベース-エミッタ間寄生容量Cπ
まずは、「アナログ集積回路設計技術」P32~33を読んで、理解に努めました。
ベースに存在する多数キャリアと少数キャリアの濃度分布は、エミッタからコレクタへ向けて直線的な下り坂となっている。
そして、Vbcが負なので、コレクタ空乏層端の少数キャリア(電子)濃度は常にほぼ0とみなしてよい。そして、バイブルの式1.33より
Ic = qADn np(0)/Wb
と書ける。np(0)、つまりベースのエミッタ側の電子濃度が上がると勾配が急になり、よってIcが増え、逆にnp(0)が下がると電子の濃度勾配が緩やかになって、よってIcが減る。そして、このnp(0)はVbeによって制御されている。
これについては、以下の知恵ノートを参照してください。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n221050
ベース-エミッタ電圧の変化⊿Vbe=viにより、ベースの少数キャリア電荷が⊿Qe = qeだけ変化する。電荷中性条件により、多数キャリア電荷も同じ量⊿Qh = qhだけ変化する。
多数キャリアは、ベースの電極から供給されるので、電圧viの印加には電荷qhのベースへの供給が必要になる。
よって、電圧(vbe)の印加で電荷がさらにたまるので、見かけ上の入力容量
Cb = qh/vi ・・・・①
が発生することになる。
一方、電流の定義より、(I[A] = Q[C] /s [秒])
Qe/Ic = τf・・・・②
という関係式が成り立つ。
Qeは、ベース中の少数キャリア電荷、τfは、順方向のベース走行時間(forward transit time)と呼ばれ、キャリアがベースを通過するのに必要な平均時間に相当する。
厳密に書くと、
τf = τE + τBE + τt + τBC
τE は、キャリアがエミッタを通り抜ける時間
τBE は、キャリアがE-B間空乏層を通り抜ける時間
τtは、キャリアがベースを通り抜ける時間
τBCは、B-C間空乏層を通り抜ける時間
であり、高周波帯で重要になってくるパラメータである。
私の知恵ノートでは、τfは、forward transit timeと書くことにします。
②より、
⊿Qe = τf ⊿Ic が成立するが、⊿Qe = ⊿Qhなので、
⊿Qh = τf ⊿Ic となり、これは
qh = τf ic ・・・・③
と書ける。
③を①に代入すると、
Cb = τf ic/vi = τf gm = τf q IC/kT ・・・・④
を得る。
従って、Cbはコレクタバイアス電流ICに比例し、ICが増えるとCbが増すことになる。
このCbが、ベース蓄積容量である。
このCbが大きくなると、高周波でBJTを使った時に問題が生じる。
容量が大きいということは、それだけ電界(ひいては電流)を生じさせるための電荷の蓄積に時間がかかるし、逆に電荷が抜けるまでその方向の電界(ひいては電流)が発生したままになってしまうからである。つまり、icの変化が入力信号についていけなくなる。
式1.33より
Ic = qADn np(0)/Wb
であるから、
Ic は、電子の拡散定数Dnとnp(0)とベース幅と断面積に依存することが読み取れる。
勾配がきつくなると、拡散しやすくなる。
Icは、ベース内少数キャリアの濃度勾配のみによって決まる。
そして、この濃度勾配は、Vbeによって決まる。
これについては、以下のノートを参照してください。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n221050
DnとAとWbは、BJTのデバイスパラメータなので、ユーザがIcを増やそうと思ったら、np(0)を増やすことになる。
以下の知恵ノートに書いたとおり、np(0)はVbeによって決まる。さらに、以下のノートに書いたように、歪みを少なくするためには、Vbeの変化量viは少ない方が望ましい。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n221050
歪はVbeとIcの非線形な関係から引き起こされる。Vbeの変化量が大きいほど、歪は大きくなる。
けれども、一般にgmは大きい方が有利なので、ICを増やしてしまうと、ベース蓄積容量までもが増えてしまうというジレンマがある。
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なお、このCbの値は、ftを調べることによって推測することができる。
ftとは、ic/ib=1となってしまう周波数のことである。
これについては、以下のブログの■ftとC1の関係を参照してください。
式展開を丁寧にやってくれているので、そのまま読めば理解できると思います。
トランジスタの高速性に関する考察 - SonofSamlawのブログ (hatenablog.com)
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ベースーエミッタ間寄生容量Cπは、
上述式④のCbと、ベース-エミッタ間空乏層容量Cjeからなり、
Cπ = Cb + Cje
= τf* gm + Cje
である。
τf*gmが支配的な成分である。
以下の知恵ノート
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n237475
で、手持ちの回路シミュレータTINA TIでこのとおりになるか実験中なので、今しばらくお待ちください。
■mpcspさん提示の資料より
順方向活性領域で、能動領域にてBJTを使うとき、ベースーエミッタ間寄生容量は、空乏層容量CjEでなく拡散容量Cbの方が支配的になる。
CjE = CjE0/√(1 + VEB/Vbi)
CjE0は、zero bias 空乏層容量
Vbiは、E-B間のビルトイン電圧
であるから、
私の手持ちの回路シミュレータで、CjE0を0にしてやれば、
Cπ = Cbになるはず。