RCCのSW電源にも使われるブロッキング発振回路のメカニズム
■質問
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14163505814
トランジスタの基本的な動作について教えてください。
添付の回路図(RCC)についてですが、
Qがオンするとベース巻線にも励磁電流が発生し、
さらにベース電流が増加し、コレクタ電流を増幅させると思うのですが、
その後のQのオフのメカニズムについて教えて下さい。
IcとIbの関係が、
その時のベース電流での最大のhFEに達した時に
飽和領域から外れてオフに移行するのだと理解しています。
(間違ってたら訂正願います)
普通のエミッタ接地でベースに定電流を流した場合は、最大のhFEに達してもその状態でIc
は流れ続けると思うのですが、、
ベース電流不足と参考書に書いてあるのですが、Icは増加しベース巻線に電流が流れ、Ibはさらに増えるのでは?
多分トランジタの基本特性をうまく理解できていないのだと思います。
こんな初心者でもこのオフのメカニズムを詳しく教えて頂ける方、
もしくはサイトをご存知の方、ご教授下さい。
図1
■回答
下図で考えますね・・・
図2
上の状態で、Q1はR1,R2によりバイアスされています。
つまり、Icが流れています。
さらに変圧器を1次側に換算します。下図です。
もしvbeが上がりIcがバイアス時より多く流れ始めたとします。とすれば、Icは急激に増加し、Lの電圧が増加します。この電圧変化が大きい場合、Lは高インピーダンスとなるので、V2は大きくなり、これはvbeを増加させ、QはON状態になります。
すると、Ic変化は小さくなるので、Lのインピーダンスは小さくなりV2は小さくなります。するとvbeが下がり、Icは初めのバイアス時の値に戻ります。
図3
しかし、Lに流れていた電流は、そのまま流れようとします。ところがQ1こコレクタはその電流を流してくれません。そこで、この電流は下図のように流れ、vbeを下げ、マイナスまで持って行ってしまいます。通常はこの電圧がマイナスにならないように、ベース回路にダイオードをいれます。
こうしてQ1はOFFになります。
しかしこのLによる電流は、やがて流れ終えます。すると、Q1はR1,R2によるバイアス電圧でvbeが上がり、Icが増加し始まります。この増加は正帰還でIcのバイアス点を超え、急激に増加し初めの状態になります。
つまり、Icの変化はやがて小さくなり、またvbeは下がります。
この繰り返しです。
図4
パルス回路、川又著、日刊工業新聞社から引用する。BJTはPNPであったが、NPNで書き直してある。V1>0、V2<0である。なを、この本の説明は、明らかに間違っており書き直してある。図はそのまま使った。
図5 回路と各部の波形
図5において、トリガ信号を入れると、vbeが生じicが流れ、変圧器の1次側の電圧が上がっていき、それに従い2次側電圧も上がり、vbeが上がる。これは正帰還であり、速い時間で完了する(b)。Q1は(b)でONになる。(b)でQ1は飽和状態になる。変圧器1次側にはほぼV1がかかり、Lの性質から、直線的にicが増加する。、その後、変圧器のコイル抵抗などで電流が制限され、上昇は終わる(c)。すると、変圧器の2次側電圧は=0になり、Q1のicは急激に減少する。しかし、変圧器のコイルに流れている電流はそのまま流れ続けようとし、R1や負荷にながれる。この電流の方向は、vbeを負にするような方向となる。これでQ1はOFFとなる(d)。
その後、変圧器に流れていた電流により、Q1のvceは電源以上に上がる(e)。
さらに、図5でV2を正にすると、連続発振する。
これを、
http://abcdefg.jpn.org/elememo/blockingosc/cc.html
の実験結果からもわかる。
図6 実験回路
図7 各部の波形
図8 変圧器の等価回路。
■まちがった回答
変圧器の1次巻線電圧をVp
変圧器のベース巻線電圧をVb
トランジスタのコレクタ・エミッタ間電圧をVce
トランジスタのベース・エミッタ間電圧をVbe
トランジスタのコレクタ電流をIc
トランジスタのベース電流をIb
トランジスタの電流増幅率をhfe
入力電圧をVin
ベース巻線と、トランジスタのベース端子との間に設けた抵抗をRb
とします。
トランジスタがターンオンした後、コレクタ電流Icは、図示のように、ほぼゼロからスタートし、1次関数的に増加します。これは、変圧器1次巻線のインダクタンスが影響するからです。この、オン期間では、
Ic<hfe・Ib
の関係が成り立ちます。
トランジスタとしては、もっとIcを流せる状態にあるので、
Vbe≒0
であり、したがって、
Vp≒Vin
です。
時間が経過すると、やがて、
Ic=hfe・Ib
となります。
これ以降も、変圧器は、より大きな電流を流し込もうとしますが、
今度は、トランジスタの都合で、Icに制限がかかります。
Ic>hfe・Ib
とはならないように、Icを制限する。
どのようにして制限するかと言うと、Vceを増加させるのです。
Vceが増加すると、Vpは、それに伴って減少します。
Vpが減少すると、それと比例関係にあるVbが減少します。
Vbが減少すると、Ibが減少し、さらにIcへの制限がかかります。
Icへのさらなる制限のために、Vceがさらに増加し、
それに伴ってVpがまた減少する・・・
というような正帰還がかかって、トランジスタは、一気にターンオフするのです。
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ベース電流Ibについてですが、
Ib=(Vb-Vbe)/Rb+起動電流
≒(Vb-Vbe)/Rb
です。
(起動電流とは、Raを通って流れてくる電流ですが、この電流は、Raを極端に大きくすることで、微小になるように設計します。)
Vbe≒0.7[V] くらいで一定です。
VbはVpと比例関係であり、Vp≒Vin なので、Vbも一定です。
したがって、オン期間において、Ibは一定となります。
Icが大きくなるとIbも大きくなるということは、ありません。
Icの増加は、励磁電流の増加であり、Ibの値とは関係のない現象なのです。
下図によって、質問者さんの誤解が解ければいいのですが…
もしかして、トランジスタの、活動領域、飽和領域、遮断領域を、説明したほうがいいのでしょうか?
活動領域
Ic=hfe・Ib が、成り立っている動作領域です。
Ibによって、Icの大きさをコントロールできます。
このとき、回路の状態に応じて、Vceは大きくなったり小さくなったりします。
飽和領域
Ic<hfe・Ib となっている動作領域です。
Ibをいくら大きくしても、Icは増えません。トランジスタ単体としては、もっとIcを流せる状態ではあるのですが、回路側の都合で、Icが制限されている状態となります。
このとき、Vce≒0 です。トランジスタは、オンしたスイッチと見なすことができます。
遮断領域
Ib=0 , Ic≒0 の状態。トランジスタは、オフしたスイッチと見なすことができます。
RCC回路において、三角波のコレクタ電流が流れている期間のトランジスタは、飽和領域にあります。つまり、スイッチオンです。三角波になる理由は、変圧器のインダクタンスの影響です。Ibで三角波になるようにコントロールしているわけでは、ありません。
そして、オフするメカニズムは、トランジスタの活動領域での特性を利用しています。
返信遅れましてすみません。
また、毎度丁寧にご説明頂きましてありがとうございます。
痒いところを掻きむしってもらった感じでバッチリ理解しました。
ありがとうございました