高速ってなんだろう?
速度? f得? 速いとは何?
キャリア移動度と高速性の関係に関する論理的な記述があまりないのでまとめてみました。
書きかけです・・・
■■ まずBJTの場合
参考書:Andrew S.Grove「半導体デバイスの基礎」オーム社(1995年)
VbeとIcの関係を考える。エミッタコモン回路を考察すればいいだろう。
図1 BJTのエミッタコモン回路の小信号等価回路
図1にBJTのエミッタコモンの小信号等価回路を示す。NPNで考える。この回路の周波数特性を決めるものは、R1,C1,R2である。
R2ベース広がり抵抗であり、ベース内でのホールの抵抗である。
C1はベース内の蓄積容量であり、ベース内での電子の分布による電荷に応じてベース内にホールが蓄積されるためである。
R1はコレクタ電流によって決まるものであり、とりあえず一定とする。
■C1の考察
ベース内での少数キャリアである電子の分布が直線であるとすれば、これによる電子による拡散電流は上の参考書によれば、
Idiff=(q*De*ni^2/(Nab*Wb))*exp(q*Vbe/kT) --(1)
となる。ここでDeはベース内の電子の拡散定数である。この値がコレクタ電流の支配的部分である。そこで、Ic=≒Idiffとして考えれば、おなじIcでもDeが大きいほどベース内の電子分布量は小さくなる。小信号としての変化分についても同じである。
つまりDeが大きいほどC1が小さくなると予想される。
Ic0を動作点のコレクタ電流とすれば、その点でのgmは(1)式より、
gm=Ic0/(kT/q) --(2)
となる。そして(1)式より、Deが大きいほど同じIc0でもベース内での電荷蓄積量が小さい。小信号としてIc0からIcをicだけ変化したときの蓄積電荷の変化も、Deが大きいほど小さくなる。つまり、あるvbeでicを変化させようとしたとき、ベースから供給されなければならないキャリア(ホール)は、Deが大きいほど小さくなる。つまり、これは図1のC1が小さくなることに相当する。
SiGe(シリコンーゲルマニュウム)BJTでは、ベース内でキャリアを加速するための勾配をつくり,Deを上げている。HBT(ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)などである。
■ftとC1の関係
ftとはic/ib=1となる周波数である。
図1でベースにibを流すと、
vbe=ib*R1/(1+sC1*R1)
ic=vbe*gm=gm*ib*R1/(1+sC1*R1)
ic/ib=gm*R1/(1+sC1*R1)
ここで、ic/ib=1なる周波数を考えftとすれば、
sC1*R1=gm*R1-1 より、
ft=(gm*R1-1)/(2π*C1*R1)
R1=β/gmであり、gm*R1=β>>1より、
ft≒gm/(2πC1)
となり、ftはC1と関係がある。つまり、ftからC1を推測できるのである。
■■ FETの場合
おおざっぱに言えば、FETではゲートに印加された電圧Vgによる空乏層でドレイン電流Idを制御する。この空乏層をつくるために電荷移動が必要となり、これが図2の小信号等価回路におけるC1となる。
図2 FET 小信号等価回路
チャネルの移動度が大きければ、同じ空乏層変化でIdの変化は大きくなる。つまりgmは大きくなる。同じgmにするのにチャネル断面積は小さくて済む。つまり、空乏層のt変化量(体積)も小さくて済むので、電荷移動量も小さくで済む。つまり、図2のC1が小さくなる。
FETの場合もftが定義され、id/ig=1となる周波数である。
id=gm*vgs
ig=vgs*(ω*C1)
より、
ft=gm/(2π*C1)
となる。
あるFETでチャネルの導電率がn倍になったとする。するとgmはn倍になる。しかし、たぶん、おそらく空乏層変化によるC1はあまり変わらない。とすると、gmとC1の比が変わる。
もう一度言うと、チャネルの導電率がn倍になれば、同じIdではgmがn倍になる。しかし、C1は変わらないだろう。するとgm/C1がn倍になる。
同じFETを並列にしたなら、gmとC1が同じように増えるだけ。この比を高めることが重要だ。HEMT(高電子移動度トランジスタ)などである。
■まとめ
以上のことから、gm/C1を高めることが高速化である、と言えますね。