素因数分解の一意性を帰納法にて証明してみます。
少し難しいかもしれませんが、挑戦してみてください。
整数論の土台ですので・・・
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因数分解の定理で、
「ある数Xは一通りの素数の積で表せる」
というのがありますが、この命題を正確に把握している者は少ない。
ここで大事なことは、「一通り」ということです。何通りにも素数積
表現されることはない、ということです。ここが難しい!
わたしは、高校のときこの問題に悩み、いろいろな人に質問したが、
だれもが「一通り」というところを考えていません。
この定理をはじめて証明して見せたのは、ガウスであるそうです。
X=ab=cb :abとcdは異なる素数の積
ということは、絶対にできない、という証明に悩むのです。
この本には、つぎの文章もありましたので、引用しておきます。
pが素数であるとき、abがpで割り切れる、ということは、aがpで割り切れるか、bがpで割り切れるかである。これが素因数分解の一意性を意味している。 (私は、この証明を高校のとき挑みましたがだめでした。要は、a、bの因数以外では、abをを割り切ることはできない、ということです。)
ガウスの「数論講究」(1801年)には、任意の合成数が素因数へと分解できることは明らかだが、多くの異なる方法で行うことができないということは暗黙に仮定されていて、証明されていない。
とある。
では、証明してみませう。
■証明開始
素因数分解が2通りできることを仮定し、それが矛盾することから
一意性を導く。
まず、最小の合成数4に注目する。2*2と素因数分解できる。よって、
最小合成数に対して一意性は証明された。
続いて、Cより小さい合成数はすべて一意性を満足し、Cが二通りの
分解、
C=α1β1γ1*・・・*δ1=α2β2γ2*・・・*δ2
をもつと仮定する。もし、α1=α2なら、全体をα1で割って、
C/α1=β1γ1*・・・*δ1=β2γ2*・・・*δ2
となる。C/α1<Cである。Cより小さい合成数はすべて一意性を満足する、と仮定しているので、α1=α2なら、二つの分解は一致してしまうことになる。
そこで、α1>α2とし、Cの定義式の両辺から
α2β1γ1*・・・*δ1
を引き、それをC2とする。
左辺=(α1β1γ1*・・・*δ1)-(α2β1γ1*・・・*δ1)
=(α1ーα2)β1γ1*・・・*δ1
右辺=(α2β2γ2*・・・*δ2)-(α2β1γ1*・・・*δ1
=α2(β2γ2*・・・*δ2-β1γ1*・・・*δ1)
C2<Cだから、C2には分解の一意性が成り立つはず。
右辺の式からα2はC2の因数である。仮定よりα2はα1、β1、
・・・γ1のどれとも等しくない。C2は分解の一意性か成り立つので、左辺の式より、α2は(α1-α2)の約数でなければならない。
すると、
(α1-α2)=α2*Q
α1=α2(1+Q)
となり、
α1、α2は異なる素数である、という仮定に反するので、これは
あり得ない。ということはC2は二通りに素因数分解できることになり、仮定に反する。
よって、素因数分解は唯一通りに表されることが、証明された。
■証明終わり
参考:吉田 武「オイラーの贈物」ちくま学芸文庫
後半はかなり書きかえて、わかりやすくしました。
原文をみて、初めはちんぷんかんぷんでした。
■原文
上の左辺・右辺の式の後は、次の文でした。
素数α2は式中のどの数とも異なるので、α2は(α1-α2)の約数でなければ、この両辺は一致しない。これは、α2がα1の約数でなければ満たされない。ところが、α1、α2は異なる素数であるのだから、これはあり得ない。従って、C2は二通りに分解されてしまい、これは仮定に反する。
よって、素因数分解は唯一通りに表されることが、証明された。