■質問
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10239637910
オシロスコープのプローブの帯域幅は何によって決まっているんでしょうか。
ACに対しても、DCに対しても減衰率を一定にできることは理解できています。
しかしそれたけでは理論的には高周波でも減衰せず帯域幅なんてできないと思ってしまいます。どなたかよろしくお願いします。
■1.伝送線路では次の関係があります。
Vr : 受端の電圧 (V)
Ir : 受端の電流 (A)
Vs : 送端の電圧 (V)
Is : 送端の電流 (A)
l : 線路の長さ (m)
k:波数(2π/λ)
λ:線路上の波長
f:周波数
ω:2πf
Z0(線路の特性インピーダンス)=√(L/C)
v(速度)=1/√(LC)
v/λ=f=ω/2π
k=ω/v
L,C:単位長さ当たりのインダクタンスと容量。
Lt,Ct:全インダクタンス
とすれば、
Vs = cosh(jk*l)*Vr + Z0*sinh(jk*l)*Ir (1)
Is = (1/Z0)*sinh(jk*l)*Vr + cosh(jk*l)*Ir (2)
これは、次のようにも書ける。
Vs=cos(kl)*Vr + jZ0*sin(kl)*Ir --(1')
Is=jsin(kl)*Vr/Z0 + cos(kl)*Ir --(2')
参考
http://www.mogami.com/paper/tline/tline-01.html
■2.証明
線路上の電圧をV(x)とします。左端がx=0です。
V(x)=V1e^-jkx + V2e^jkx -----(3)
V1,V2はそれぞれ線路を右、左に進む信号です。
Vs=V1+V2 ----(4)
Vr=V1e^-jkl+V2e^jkl -----(5)
Is=V1/Z0-V2/Z0 ------(6)
Ir=V1/Z0*e^-jkl-V2/Z0*e^jkl -----(7)
(5),(7)より、
V1=Vr/2*e^jkl + IrZ0/2*e^jkl -----(8)
V2=Vr/2*e^-jkl - IrZ0/2*e^-jkl -----(9)
(4),(6)より、
V1=Vs/2+Z0Is/2 ----(10)
V2=Vs/2-Z0Is/2 ---- (11)
(10),(11)より V1+V2=Vs,(V1-V2)/Z0=Isであるから、(8),(9)とあわせて、
Vs=(e^jkl+e^-jkl)Vr/2 + Z0(e^jkl-e^-jkl)Ir/2
Is=(e^jkl-e^-jkl)Vr/(2Z0) + (e^jkl+e^-jkl)Ir/2
つまり、
Vs=cosh(jkl)*Vr + Z0*sinh(jkl)*Ir
Is=sinh(jkl)*Vr/Z0 + cosh(jkl)*Ir
となり、(1)(2)は証明された。
■3.Rlで終端された線路を含めたインピーダンス
上の(1)(2)
Vs=cosh(jkl)*Vr + Z0*sinh(jkl)*Ir
Is=sinh(jkl)*Vr/Z0 + cosh(jkl)*Ir
という関係から
Vs/Ir=cosh(jkl)*Rl + Z0*sinh(jkl)
Is/Ir=sinh(jkl)*Rl/Z0 + cosh(jkl)
線路を含めたIN インピーダンスは
Zin=Vs/Is=(cosh(jkl)*Rl + Z0*sinh(jkl))/(sinh(jkl)*Rl/Z0 + cosh(jkl))
=(cos(kl)*Rl+Z0*j*sin(kl))/(j*sin(kl)*Rl/Z0+cos(kl)) --(12)
★ (a)kl=2πl/λ<<2πの場合
kl<<2π、つまりkl=2πl/λ<<2πであれば、coskl=1,sinkl=kl
とできるので、
Zin≒Z0(Rl+jZ0kl)/(Z0+jRl*kl)
=Rl(1+jklZ0/Rl)/(1+jklRl/Z0) ---(13)
と近似できます。
★(b)kl=2πl/λ<<2πかつRL>>Z0の場合
さらにオシロプローブでは、 RL>>Z0 であるので、
≒Rl/(1+jklRl/Z0) -----(14)
となります。
ここで、kl/Z0=l2π/(λZ0) =l*2πf/(vZ0=l*ω√LC*√(C/L)=ω*l*C=ωCt
つまり,
Zin≒Rl/(1+jωRl*Ct) -----(15)
となり、線路は入り口から見て、単にRLとCtの並列回路と見てよい。
つまり、
線路+1MΩを単なるCtと1MΩの並列回路としてよい。
★(c)kl=2πl/λ<<2πかつRl<<Z0の場合
次に、2πl/λ<<2π, Rl<<Z0の場合です。
つまり、抵抗RlがZ0に対して小さいときです。
(12)式は
Zin≒Rl(1+jklZ0/Rl)
=Rl+jklZo -----(16)
ここで、klZo =l*(ω/v)*Z0=l√(LC)*√(L/C)=ωLl=ωLt
よって、
Zin=Rl+jωLt ------ (17)
となる。つまり、線路は入り口からみると、単にLtとRlの直列回路と見てよいことになる。
★ つまり、線路上の波長が、線路長lに比べて十分大きいとき、
Rl>>Z0 ----->線路の入り口では、Rlと並列なCとしてよい。
Rl<<Z0------>線路の入り口では、Rlと直列なLとしてよい。
ということがわかりました。
★ オシロのプローブを使うとき、このことを頭に入れておくと役立ちます。
■4.Rlで終端された線路でのVr/Vs
上の(1')から、
Vs=cos(kl)*Vr + jZ0*sin(kl)*Ir
より、
Vs=cos(kl)*Vr + jZ0*sin(kl)*Vr/Rl
Vr/Vs=1/(cos(kl)+ jZ0*sin(kl)/Rl)
ここで、2πl/λ<<2πの場合では、
cos(kl)≒1
sin(kl)≒kl
から、
Vr/Vs≒1/(1+ jZ0*kl/Rl)
さらに、Rl>>Z0の場合、
Vr/Vs≒1
■5.例
例として、
L=0.6μH/m
C=50pF/m
l=1.3m
の場合、
v=1.83E8(m/s)
Z0=110Ω
Lt=0.78μH
Ct=65pF
λはlの10倍くらいにするとすれば、
10*l=13m
以上にはしたいんで、このプローブでは、
f=v/λ=14MHz
位がいいとこだと思います
■6.補足
線路の抵抗値Rや線間コンダクタンスGの効果は、
http://www.mogami.com/paper/tline/tline-01.html
によれば、
ーーーー
V(x) = V1*exp(-γ*x) + V2*exp(+γ*x) (2.1)
I(x) = V1/Z0*(exp(-γ*x) - V2*exp(+γ*x)) (2.2)
ここに
Z0 = 特性インピーダンス(characteristic impedance)
= sqrt*1 (2.3)
γ = 伝搬定数
= sqrt*2 (2.4)
ーーーー
ーーーー
γ = α + j*β (2.5)
ここに
α = 減衰定数(attenuation constant) (neper/m)
β = 位相定数(phase constant) (rad/s)
α = sqrt(0.5*(sqrt*3 - (ω^2*L*C - RG)))
= R / 2 / Real(Z0) + G * Abs(Z0)^2 / 2 / Real(Z0)
β = sqrt(0.5*(sqrt*4 + (ω^2*L*C - RG)))
abs(Z0) = *5^(1/4)
arg(Z0) = 0.5*(atan(ω*L/R) - atan(ω*C/G))
ーーーー
とされています。線路でのR、Gを考える場合、
Z0と上でのjkをこれに置き換えます。
jk-ー>α + j*β
β=k
です。
かなり複雑です。これを使えば、上記の式を使い解析できます。
質問者からのお礼コメント
ありがとうございます。ここまでご丁寧な回答が頂けるとは思いませんでした。
帯域幅が決まる理由、プローブメーカーがどのように帯域幅をとっているか、そのトレードオフまで理解できる内容だったと思います。BA以外の方も丁寧な回答をありがとうございました。
お礼日時:3/6 17:01