SonofSamlawのブログ

うひょひょ

オシロスコープのプローブのケーブルはC? L? 解析します(伝送線路解析)

オシロスコープのプローブをどのような素子に見たらいいのか?  

 

 つまり、Cとみたらいいのか? 

 Lとみたらいいのか? です。

 一般には低周波では、ケーブルをCとみていますよね。当然、波長>ケーブル長 のときですね。

 ここでは、ケーブルの終端抵抗Rlの大きさによって、これが変わってくることを、厳密に説明してみます。Rl>Z0(ケーブル特性抵抗)ではC,Rl<ZoではLに見えることを証明します。

  同時に、この近似が成り立つためのケーブル長と周波数の条件を明確にしますので、参考にしてください。

 

http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n149467

も参考にね



■ まず基礎理論です。


http://bbs.ednjapan.com/ADI/index.php?bid=4&v=1315364774BRkDyN
参照


線路端がRlで終端された線路を、もう一端からみたときの
インピーダンスZinは、sin波の信号のとき、


Zin=(cosh(jkl)*Rl + Z0*sinh(jkl))/(sinh(jkl)*Rl/Z0 + cosh(jkl))


=(cos(kl)*Rl+Z0*j*sin(kl))/
(j*sin(kl)*Rl/Z0+cos(kl))             (1)


ここで、Rlは線路端につけられた抵抗、Z0は線路の特性抵抗とする。
さらに、


vを線路上の信号速度、λを線路上の波長、fを周波数、
ωを角周波数、lを線路長、τ=l/v


とすると、


τ=l/v
λ=v/f=2πv/ω
より
λ=2πl/(ωτ)


これと
k=2π/λ
より


ωτ=2πl/λ=kl


となるから(1)式は、


Zin=Z0*(Rl*cosωτ+jZ0*sinωτ)/(Z0*cosωτ+jRl*sinωτ)    (2)


となります。


さらに、


Zo=√(L/C)
v=1/√(LC)


であります。
ここで、L,Cは1mあたりの線路のインダクタンスと容量です。


■ 参考までに、
http://www.bbs-reedjp.com/ADI/index.php?bid=4&u=on&v=1298973393ZnBKHk
「オッシロプローブ用線路の特性計算」ishibashiya様


によればケーブルで
L=0.6μH/m
C=50pF/m
l=1.3m


ですから、v=1.83E8(m/s)
τ=1.3/1.83E8=7.1ns
1/(2τ)=70MHz


となり、周波数特性において、
70MHzにはじめのピークが現れることになります。


■ここからが本題です


オシロの容量入力型プローブのケーブル+1MΩのインピーダンスを(2)
式から考えます。(2)式をもう一度書きます。


Zin=Z0*(Rl*cosωτ+jZ0*sinωτ)/(Z0*cosωτ+jRl*sinωτ) (2)


ωτ<<2π、つまりkLen=2πLen/λ<<2πであれば、cosx=1,sinx=x
とできるので、


  Zin≒Z0(Rl+jZ0ωτ)/(Z00+jRlωτ)
   =Rl(1+jωτZ0/Rl)/(1+jωτRl/Z0)     (3)


と近似できます。さらにオシロプローブでは、 RL>>Z0 であるので、


   ≒Rl/(1+jωτRl/Z0)           (4)


となります。
ここで、τ/Z0=l/v/Z0=l*√LC*√(C/L)=l*C
つまり、線路の全容量Ctとなります。
つまり


      Zin≒Rl/(1+jωRl*Ct)                       (5)


となり、RLとCtの並列回路のインピーダンスとなる。
つまり、
オシロのケーブル+!MΩを単なるCと1MΩの並列回路と見られるのは、


     2πl/λ<<2π
     RL>>Z0


の範囲ときである。


■次に、2πl/λ<<2π, Rl<<Z0の場合です。
つまり、抵抗RlがZ0に対して小さいときです。


(2)式は


   Zin≒Rl(1+jωτZ0/Rl)
    =Rl+jωτZo               (6)


ここで、τZo =l/v*Z0=l√(LC)*√(L/C)=l*L
となり、これは全線路インダクタンスLtである。よって、


           Zin=Rl+jωLt        (7)


となる。つまり、ケーブルを単にLと見てよいことになる。


■ つまり、線路上の波長が、線路長lに比べて十分大きいとき、


  Rl>>Z0 ----->線路はRlと並列なCにみえる


 Rl<<Z0------>線路はRlと直列なLにみえる


ということがわかりました。


■ オシロのプローブを使うとき、このことを頭に入れておくと役立ちます。





【付録】

■反射係数
OUTインピーダンスZoutの信号源に、特性インピーダンスZ0の同軸
線がつながり、その先にZinというインピーダンスがつながっていると
します。

 ここで、Zin側での反射係数を導いてみます。

Zinに向かう信号をV1,I1とし、Zinで反射された信号をV2,I2とします。
Zinの端子電圧と電流は、Vin,Iinとしますよ。I1の正方向は右方向、
I2の正方向は左方向、としますIinの正方向は下方向とします。すると、

   I1-I2-Iin=0

I1=V1/Z0

I2=V2/Z0

Iin=(V1+V2)/Zin

これより、

(V1-V2)/Z0-(V1+V2)/Zin=0

V1(1/Z0-1/Zin)-V2(1/Z0+1/Zin)=0

V1(Zin-Z0)/(Z0Zin)-V2(Zin+Z0)/(Z0Zin)=0

V2/V1=(Zin-Z0)/(Zin+Z0)

となります。これが負荷側(Zin側)での電圧の反射係数Rvとなります 。

■特性抵抗Z0の伝送線路の性質

Vs = cosh(γ*l)*Vr + Z0*sinh(γ*l)*Ir      (1)
Is = (1/Z0)*sinh(γ*l)*Vr + cosh(γ*l)*Ir         (2)

 

を証明する。

ここに、

Vr = 受端の電圧 (V)
Ir = 受端の電流 (A)
Vs = 送端の電圧 (V)
Is = 送端の電流 (A)
l = 線路の長さ (m)

参考

http://www.mogami.com/paper/tline/tline-01.html

 

線路上の電圧をV(x)とします。左端がx=0です。
入力が大変なので、γを似ているyとします(^^)

 V(x)=V1e^-yx + V2e^yx      (3)

V1,V2はそれぞれ線路を右、左に進む信号です。

Vs=V1+V2   (4)
Vr=V1e^-yl+V2e^yl   (5)
Is=V1/Z0-V2/Z0   (6)
Ir=V1/Z0*e^-yl-V2/Z0*e^yl   (7)

(5),(7)より、

V1=Vr/2*e^yl + IrZ0/2*e^yl   (8)
V2=Vr/2*e^-yl - IrZ0/2*e^-yl   (9)

(4),(6)より、

V1=Vs/2+Z0Is/2   (10)
V2=Vs/2-Z0Is/2   (11)

(10),(11)より V1+V2=Vs,(V1-V2)/Z0=Isであるから、(8),(9)とあわせて、

Vs=(e^yl+e^-yl)Vr/2 + Z0(e^yl-e^-yl)Ir/2
Is=(e^yl-e^-yl)Vr/(2Z0) + (e^yl+e^-yl)Ir/2
つまり、

Vs=cosh(yl)*Vr + Z0*sinh(yl)*Ir
Is=sinh(yl)*Vr/Z0 + cosh(yl)*Ir

となり、(1)(2)は証明された。

 

注意しておきたいのは、これらは、「定常状態」におけるものである、ということである。過渡的な問題に関しては、

http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n149467

を参照。

■Rlで終端された線路を含めたインピーダンス
上の
Vs=cosh(jkl)*Vr + Z0*sinh(jkl)*Ir
Is=sinh(jkl)*Vr/Z0 + cosh(jkl)*Ir

という関係から

Vs/Ir=cosh(jkl)*Rl + Z0*sinh(jkl)
Is/Ir=sinh(jkl)*Rl/Z0 + cosh(jkl)

線路を含めたIN インピーダンス
Vs/Is=(cosh(jkl)*Rl + Z0*sinh(jkl))/(sinh(jkl)*Rl/Z0 + cosh(jkl))

=(cos(kl)*Rl+Z0*j*sin(kl))/
(j*sin(kl)*Rl/Z0+cos(kl))

 

 

■ 多重反射の考察

 

 伝送線路 定常.jpg

        図1 多重反射

 

  上の考察においては行きと帰りの信号で考察されている。それは1回の反射しか考えられていない。実際は図1のように伝送線路に入った信号は何回も反射されて無限に繰り返される。しかし、この場合、図1で(a1,b1)、(a2、b2)、・・・のおのおのについては上の計算の結果は成り立つ。すると、それらの和についても電流と電圧の関係は同じものが成り立つ。つまり、信号の1回の往復に関しての結果が多重反射しているときにも成り立つということになる。

 

 ■ 反射による過渡現象

 

 ■1

OUTインピーダンスZoutの信号源に、特性インピーダンスZ0の同軸
線がつながり、その先にZinというインピーダンスがつながっていると
します。

 ここで、Zin側での反射係数を導いてみます。

Zinに向かう信号をV1,I1とし、Zinで反射された信号をV2,I2とします。
Zinの端子電圧と電流は、Vin,Iinとしますよ。I1の正方向は右方向、
I2の正方向は左方向、としますIinの正方向は下方向とします。すると、

   I1-I2-Iin=0

I1=V1/Z0

I2=V2/Z0

Iin=(V1+V2)/Zin

これより、

(V1-V2)/Z0-(V1+V2)/Zin=0

V1(1/Z0-1/Zin)-V2(1/Z0+1/Zin)=0

V1(Zin-Z0)/(Z0Zin)-V2(Zin+Z0)/(Z0Zin)=0

V2/V1=(Zin-Z0)/(Zin+Z0)

となります。これが負荷側(Zin側)での電圧の反射係数Rvとなります。

信号としてはステップ信号で考えます。振幅(電圧)はEoutとします。

 

 

 

■2

Zin>Z0、Zout=Z0とします。この場合、低周波技術者が考えれば、

負荷Zinの端子電圧Ezinは、

    Ezin=Eout*Zin/(Zout+Zin)      (1)

となりますね。しかし、信号の反射という考え方でいくと、次のように
なります。まず信号源から発射された電圧はEout/2となって同軸線に入り
ます。電圧の反射係数Rvは正となります反射電圧は

             Rv*Eout/2
です。信号源側はマッチしていますので。そこでは反射されません。
そこで、Zinの端子電圧は

 Eout/2+Rv*Eout/2=Eout/2+(Zin-Z0)/(Zin+Z0)*Eout/2

Zout=Z0ですから、

  Eout/2(1+(Zin-Zout)/(Zin+Zout)=Eout/2*(2Zin)/(Zin+Zout)

=Eout*Zin/(Zout+Zin)      (2)

となり、(1)式と一致します。

 

■3

Zin>Z0、Zout=0とします。この場合、低周波技術者が考えれば、

負荷Zinの端子電圧Ezinは、

    Ezin=Eout       (1)

となりますね。しかし、信号の反射という考え方でいくと、次のように
なります。まず信号源から発射された電圧はEout(V1)でZinに到達します。
それが右側の反射係数Rv1で反射され、V2(=Rv1*Eout)が発生します。それが左でまた
反射されます。反射係数Rv2は(0-Z0)/(0+Z0)=-1です。この信号-Rv1*Eout
はまたZinに到達し、つまり合計すれば、

       Eout+Rv1*Eout-Rv1*Eout=Eout

となります。-Rv1*Eoutは右側で反射され -Rv1^2*Eoutとなり、また左側
で反射され、Rv1^2*EoutとなZinに加わります。これらの合計も0となり、
Eoutとなります。結局Zinの端子電圧は

Eout+Rv1*Eout-Rv1*Eout+Rv1~2*Eout-Rv1^2*Eout+Rv1^3*Eout-Rv1^3*Eout
.....=Eout
となり、振動しながらEoutに収束します。この収束時間は、低周波技術者が問題にする
時間に比べて小さいので問題になりません。
また、周波数特性もそれについていかないので、観測もできません

 

 

■4

 Zin≠Z0、Zout≠Z0の場合においても同じであり、反射をくりかえしながら、最終値に収束していきます。

 この値が、通常の計算結果と一致します。