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変圧器の解析

ライター:mpcsp079さん(最終更新日時:2015/8/14)投稿日:2014/1/10

  • 変圧器の解析

  

      

  変圧器の理解の仕方、処理の仕方には2つある。これを整理してみた。

   

        図1 変圧器モデル

 

■変圧器の構成

  図1において、コイル1と2が高透磁率のコアに巻いてある。簡単のためにコイルは同一場所に巻いてあり(つまり広がりがなく)、巻き数はN1,N2とする。コイル1を1ターンとしたときの電流1Aによるコイル1中の磁束Φ1のうち、コイル2を通る部分をΦ12とする。おなじく、コイル2を1ターンとしたときの電流1Aによるコイル2中の磁束Φ2のうち、コイル1を通る部分をΦ21とする。コイルを通るとは、コイルの部分を通る磁束であり、巻き数は関係なくコイルの巻いてある部分をを通るものを考える。相反性から、

 

    ΦM=Φ12=Φ21             ---(1)

 

  ここで、変圧比N1/N2=V1’/V2’をaとすることを覚えていてもらいたい。 

 

相反定理は次を参照

http://qube.phys.kindai.ac.jp/users/kondo/lectures/em_tb/node195.html 

         

   


              図2 変圧器モデル

 

  そこで、これらの結果より変圧器の等価回路を図2の(b)のように考える。L1’,L2’は漏れインダクタンスと言われる。LX1,2の上の点は、それが同じ方向にあるとき、Mが正であることを示す。つまり、図2の状態において、V1’によって生じる磁束ΦMによって生じるV2’は、図の位置でV1’と同相であるということだ。もし、この点が互い違いに打ってあれば、V1’とV2’が逆相であることになる。Mで言えば、これが負になるのである。

 

LX1=L1+L1’

LX2=L2+L2’

 

L1’,L2’は漏れインダクタンスという。

 

L1=Φ12*N1^2=ΦM*N1^2           ---(2)

L1’=(Φ1-Φ12)N1^2=(Φ1-ΦM)N1^2 ---(3)

L2=Φ21*N2^2= ΦM*N2^2         ---(4)

L2’=(Φ2-Φ21)N2^2=(Φ2-ΦM)N2^2 ---(5)

M=Φ12*N1*N2=Φ21*N1*N2       ---(6)

=ΦM*N1*N2=√(L1*L2)            ---(7)

 

■第一の等価回路(T型等価回路)

  これは回路理論で出てくる。完全な数学的な扱いである。

  図2(a)のT型等価回路を4端子パラメータ論により、エレガントに考えてみる。この等価回路は、無条件に機械的に成立し、漏れインダクタンスなど理解する必要はない。もっとも簡単で論理的な等価回路ではあるが、変圧器の理解は深まらない。

http://www.rainbowseeker.jp/xoops/modules/newbb/viewtopic.php?viewmode=thread&topic_id=346&forum=10&post_id=2440#forumpost2440

より考える。 

 

    

            図3 T型回路

 

  図2(a)より、

V1=jωLX1*I1+jωM*I2      --(8)        

V2=jωLX2*I2+jωM*I1      --(9)         

 

  図3では、

V1=(Z1+Z2)*I1+Z2*I2

V2=Z2*I1+(Z2+Z3)*I2

 

となるから、ここで

X1=jωLX1

X2=jωLX2

X3=jωM

とおくと、

Z1+Z2=X1

Z2=X3

Z2=X3

Z2+Z3=X2

となるので、

Z2=X3=jωM

Z1=X1-X3=jω(LX1-M)

Z3=X2-X3=jω(LX2-M)

という関係があれば、図4は(8)(9)式の関係が成り立っているこの場合、LX1、LX2,Mの間には制約はない。変圧器の極性が逆である時は、Mを負にすればいい。図7の各インダクタンスは負の値もあり得る。あくまでも数学モデルである。

 

       図4 式(14)(15)を実現するT型回路

 

  もし、巻き方が 逆極性であれば、つまり、LX1,2の点が互い違いであるならば、Mが負になる。これを正の数MによりーMと表せば、図5のようになる。-Mというインダクタンス(Mは正)は現実にはない。つまり、この回路は実現はできない。つまり、この回路をT型回路で実現することはできない。しかし、IN/OUT間の関係は、図2(a)と同じなのである。単なる数学的なモデルである。 

          図5 逆極性の場合のT型等価回路

 

 

■第二の等価回路(電気機器学でやる考え方)

http://ja.wikipedia.org/wiki/漏れインダクタンス

 

  これは電気機器学で出てくる。実際の動作から考えられている。上の等価回路のような非現実なものは出てこない。

  

            図6 もれ磁束なし変圧器

 

 

  電気機器学では次のように説明される。図6、つまり図2(b)でL1’、L2’がない場合で考える。この場合、L1を通る磁束はすべてL2も通る。逆も成り立つ。

  まず、負荷Zがない場合、コイル1の磁束ΦM=Φ12=Φ21による電圧が1次側電圧V1’に釣り合う。

 

  V1’=jωΦM*N1

より、

  ΦM=V1’/(jω*N1)

このΦMによる2次側の電圧V2’は、

  V2’=jωΦM*N2=jω*N2*V1’/(jω*N1)

     =N2*V1’/N1

  V2’/V1’=N2/N1

 

そして、このときI1は、

  I1=V1’/(jωL1)=V1’/(jωΦM*N1^2)

が流れる。これを一般にはI0と書き、励磁電流という。

 

 このとき、

  L1*I1=L2*I2=ΦM

  L1=A*N1^2

  L2=A*N2^2

  L1/L2=(N1/N2)^2

 

  ここで、負荷Zをつなげて2次電流I2が流れたとする。この電流I2により、磁路の磁束は変化する。すると誘起電圧がV1’と釣り合わなくなるので、ほぼ瞬間的に1次側からこれを打ち消すために1次電流が流れる。起磁力の釣り合いから、これは次の関係を満足しなければならない。

 

    I1負荷*N1=I2*N2

つまり、

    I1負荷=I2*N2/N1

 

となる電流が、I0に追加されることになる。そこで1次電流I1は、

 

    I1=I0+I1負荷

 

となる。この等価回路は図7となる。

   

            図7 変圧器の等価回路

 

  ここで、理想変圧器とは、励磁電流がいらなく、電圧比がN1:N2、電流比がN2:N1の仮想素子(機器)である。 つまりV1’を加えたとき、V2’=V1’*N2/N1となり、I2’が流されるとI1’=I2’*N2/N1が流れるという、架空の装置なのである。

 

   変圧比N1/N2=V1’/V2’をaとし、V1とI1の関係のみに注目すると、図7はさらに図8になる。この図は、1次側の電流 I1のみが元回路と等価なのである。 

 

  

         図8 1次側に換算した等価回路

 

 

     ーーーーーーーー   おわり  ーーーーーーーーーーー

 

 

 

参考

 http://www.electrical4u.com/equivalent-circuit-of-transformer-referred-to-primary-and-secondary/

 

http://simcir.co.jp/Circuit_Theory/Mutual_Induction.html

 

 

 

 

=========以下保留============ 

 

■図3にもれ磁束がない部分のみを示す。この部分を解析する。

 

V1’=jωL1*I1+jωM*I2           --(8)

V2’=jωL2*I2+jωM*I1           --(9)

 

端子2に抵抗Zがついていると、

V2’=-I2*Z                  ---(10)

(9)式に入れ、

-I2*Z=jωL2*I2+jωM*I1

I2(-Z-jωL2)=jωM*I1

I2=jωM*I1/(-Z-jωL2)

これを(8)式に入れ、

V1’=jωL1*I1+jωM*jωM*I1/(-Z-jωL2)

I1=V1’/(jωL1+jωM*jωM/(-Z-jωL2)) 

=V1’*(-Z-jωL2)/(ーjωL1*Z+ω^2L1L2ーω^2M^2)

(2)(4)(6)(7)から、

L1*L2=M^2であるから、

I1=V1’*(Z+jωL2)/(jωL1*Z)     ーーー(11)

I1=V1’*(1/jωL1+L2/(L1*Z))

 =V1’*(1/jωL1+N2^2/(N1^2*Z)) ーー(11)’    

 

一方(8)(9)式から、

L2*V1’=jωL1L2*I1+jωM*L2*I2        

M*V2’=jωL2*M*I2+jωM^2*I1 

となり差をとると、この場合、L1*L2=M^2であるので、 

L2*V1’ ー M*V2’=I1(jωL1L2ーjωM^2 ) =0

 V2’/V1’=L2/M=√(L2/L1)=N2/N1  ---(12)

 

 ーーーーーーーーー

L2=L1/a^2

であるから、

Za=Z*a^2

と置くと、

I1=V1’*(Za/a^2+jωL1/a^2)/(jωL1*Za/a^2) 

= V1’*(Za+jωL1)/(jωL1*Za)         ーーー(13) 

となり、これは図4のような等価回路になる。 

  

   


          図4 式(13)に対応する等価回路 

  

  この図4は1次側の電圧、電流に関しては図3と等しいが、2次電圧は異なる。つまり、1次側に換算された等価回路なのである。この場合、つまり、図2において、N1=N2として、他の定数を次のように変換した場合に等しい。

 

 L1=ΦM*N1^2

 L2ーー>L2a=ΦM*N2^2*a^2=ΦM*N1^2=L1

 L1’=(Φ1-ΦM)N1^2 =Φ1*N1^2-Ma 

    = LX1-Ma

 L2’ーー>L2a’=L2’*a^2=(Φ2-ΦM)N2^2*a^2

            =(Φ2-ΦM)N1^2 =Φ2*N1^2-Ma

            =LX2*a^2-Ma

 Mーー>Ma=M*a=ΦM*N1*N2*a=ΦM*N1^2

 

これを図5に示す。これが良く出てくる図である。図4のZは、図5から、

 

   Z=LX2-M/a+ZL

 

となる。   

          図5 図2を1次側に換算した等価回路