マクスウェル方程式 E,D,H,Bの整理
難しいE,D,H,Bの関係を考え、B-H特性の意味を明らかにする
難しいE,D,H,Bの関係をE-B対応の考え方で整理し、
B-H特性の意味を明らかにする
■まずE,Dについて
電界Eexの中に誘電率ε=εs*ε0の誘電体があり、かけた電界EexによりPに分極しているとする。Eはその結果の誘電体内の電界、ε0は真空の誘電率、εsは比誘電率とする。すると、
ε0*Eex=ε0*E+P
となる。磁性体内で本質的な磁場の強さBは、BexがMにより強められるのとは逆に、誘電体では本質的な電場の強さEは、Pにより弱められる。 上の式で、副変数Dは、
D=ε0*Eex
と置かれる。つまり、
D=ε0*E+P=ε0*εs*E
誘電体内の電界Eは、
E=Eex-P/ε0
となり、磁性体とは逆になる。さらに、
D=ε0*Eex
だから、
ε0*Eex=ε0*εs*E
E=Eex/εs
これは磁場理論とは逆である。この逆転は、電場ではEが、磁場ではBが本質的な(副変数ではないという意味)変数であるということに対応している。 磁場理論では磁性体内の磁場強さBは加えたBexと生じたMの和であるのに、 電場理論では誘電体内の電場強さEは加えたEexから生じたPを引いたものとなっている。
この逆転は、磁場理論ではBを、電場理論ではEを本質的な量とすることにより、形式的には、
D=ε0*E+P
B=μ0*H+M
と対称な形となっている。しばしば誰もが疑問に思うことは、これらの式中のD,E,B,Hがなんなのか、ということだ。上にあるように、
D/ε0
は誘電体にかけた電界、 Eは誘電体内の電界、 Bは磁性体内の磁束密度、μ0*Hは磁性体にかけた磁束密度である。このように考えると線形な誘電体では、
P=χp*Eex=χp*D/ε0
となることが想定されるので、
D=ε0*E+P=ε0*E+χp*D
これから、
D(1-χp)=ε0*E
D=(ε0/(1-χp))*E
ここで、
ε≜ε0/(1-χp)
とすれば、
D=ε*E
と書ける。Pによる電界は、Eexを打ち消す方向にあるから、Pは
Pmax=ε0*Eex
(Pが無限平板であるとき、内部電界はP/ε0になるから)
より大きくはなれない。このときPの発生原因である電界が=0になるからである。よって、
χp<1
これから、
ε/ε0=1/(1-χp)>1
であることがわかる。
■次にH,Bについて
こんどはHが副変数になります。これは歴史的なところから理解しなければなりませぬ。
磁束密度Bexの中に透磁率μ=μs*μ0の磁性体があり、BexによりMに磁化しているとする。μ0は真空の誘電率、μsは比透磁率。MはBexに比例するとする。Mを磁性体の磁化とすると、その場の磁束密度Bmは、
Bm=Bex+M
となる。ここで、
Bex=μ0*H
という副変数Hを導入する。
H≜Bex/μ0=(Bm-M)/μ0
このHは、磁化Mの原因となった磁束密度Bexの1/μ0であるということだ。
ようやくすれば、磁束密度Bexにμsの磁性体を置くと、その内部の磁束密度Bmは、
Bm=Bex+M
となる。Hは、
H=(Bm-M)/μ0=Bex/μ0
で定義された副変数である。しかし、μ0*Hはいたるところで、磁性体が磁化する原因となった磁束密度である。つまり、上のPと同じようにMはHに比例する、とかんがえるのが妥当である。
M=χm*H
すると、
B=μ0*H+μ0*χm+H=μ0(1+χm)*H
ここで、
μ≜μ0(1+χm)>1
を定義すれば、
B=μ*H
となる。
■磁性体のB-H特性とは?
つまり、H*μ0は実際の磁束密度Bm(磁性体が存在する)からMをひいたもの、磁性体の磁化Mの効果を差し引いたもの、つまりBexを表している。
だから、磁性体のBーH特性とは、BexとBmの関係を表しているということでちゅ。しかし、BexではなくBex/μ0を使うのである。
このHはアンペール則により、磁性体に関係なく電流・起磁力のみによりきまるのである。ここが肝心だ。つまり、Hを起磁力により決定し、そのご磁性体のμからいたるところの磁束密度を決めていくのである。
H≜(B-M)/μ0
とし、 磁性体が点在するときを考える。
まず、
∲(M/μ0)・dl
を考え、次のように変形する
∬rot(M/μ0)・ndS
ここで
Jm≜rot(M/μ0)
と置くと、
Im=∬(Jm)・ndS
という電流にみなせることがわかる。
すると、真電流I0も加えると全電流Itotは
Itot=I0+Im
これで、磁性体のMを電流換算できた。
磁性体がなく、電流I0,Imのみがある場合、アンペール則より
∲(B/μ0)・dl=Im+I0
は成り立つ。上から、
Im=∲(M/μ0)・dl
だから、これを逆にたどり、空間に磁性体があるときも
∲(B/μ0)・dlー∲(M/μ0)・dl =I0
∲((B-M)/μ0)・dl=I0
Hの定義より
∲H・dl=I0
となり、この式は空間に磁性体があっても成り立つことになる。
■
磁性体内では外部磁場Bex、M,Mによる磁束密度はみな同じ方向
誘電体内では、外部電界EexとPは同じ方向。Pによる電界は逆向きとなり、内部電界はEexより小さくなる。
磁性体のMはソレノイド(コイル)による電磁石のようなものと考えていい。だから内部のBの方向はMと同じ。
しかし、誘電体Pは分極した+-の電荷によって生まれ、-から+に向かう方向にとる。これは外部電界Eexと同じ向きになる。しかし、この電荷による電界はEexと逆向きになる。この点で磁性体とは逆になる。
磁性体と誘電体の扱いはこのように完全には対称的ではない。 E-B対応の考えでは、 磁性体では本質的な変数Bは、磁性体内の磁束密度となっていて、 誘電体でも本質的な変数Eは、誘電体内の電界となっている。
MとPの効果は逆であるが、B、Eを主要変数とすることで、 E,D,H,Bの関係式は対称的な形となっている。