jFETの理論式集
FETに関する理論式を集めた
■VT(ターンオフVgs),Vp(ピンチオフ電圧)の説明
アニメーション
http://www.learnabout-electronics.org/fet_03.php
を見ながら読んでね。
下の図は
http://akita-nct.jp/tanaka/kougi/2009nen/4e/10-1fet.pdf#search='接合+電界効果トランジスタ'
図1 VTの説明
図2 Vpの説明
ピンチオフとは、図2の折れ曲がる点で、Vgs,Vds0であったとすると、
Vp=Vds0+Vgs+Vbi
と定義される。つまり、Vp、Vgs、Vbiが決まっていれば、図2の折れ曲がる点のVdsをVds0とすれば、
Vds0=Vp-Vgs-Vbi
となる。
■もう一度ピンチオフ電圧の説明(n型jFETの場合)
簡単のためビルトイン電圧ΦB、Vbiの影響を無視する。チャネル空乏層の厚さは、ゲートとチャネルの逆バイアス度により決まる。この逆バイアス電圧が大きくなると、チャネル幅は小さくなる。ゲート電圧を下げても、ドレイン電圧を上げても、ドレインはチャネルに接続されているから、空乏層は広がる。この状態が直線領域である。電流はVdsにほぼ比例している。
しかし、あまりにもチャネルが狭くなると、Vdsが増加してもIdは増加しなくなる。ついにドレイン付近でチャネル幅がなくなった状態がピンチオフである。これ以後、ドレインは定電流動作する。
ゲートーチャネルの逆バイアスは、Vgsの符号がー、Vdsの符号が+なら、
|Vgs|+|Vds|
の値で決まる。この値がある以上になったとき、空乏層はチャネルを閉じさせる。この値をピンチオフ電圧Vpという。
Vp=Vgs+Vds
を満たすVgs,Vdsで起こる。だから、Vgsが大きく(負で)なれば、ピンチオフを起こすVdsは小さくなる。図2はこれを表している。
■ピンチオフについて
空乏層は伝導率は=0ではないです。真性半導体レベルです。しかし、ゲート電圧による空乏層化では、その長さが大きく、電流が流れなくなる、と考えてもいいレベルです。。
ところが、G-D間電圧によるものは、その長さが短く導電率がそこだけ上がります。それで電流が制限されるわけです。それは、G-D間電圧で増加するので、定電流化するのです。
■VT(ターンオフ電圧、ドレイン電流遮断Vgs電圧)
これは、ドレイン電圧に関係なく、チャネルを完全に空乏層にしてしまうVgsのことをいう。ソース付近からドレインまで空乏層にしてしまうVgsをVTという。図1で示した。
■理論
二人の著者グローブ(インテル会長)、ジィー(ベル研)の説明と記号に違いがあるが、一致した内容である。
①グローブ本
VGの値は本当の値を示す。つまり、-2Vをかけたとき、VGはー2Vを意味する。下のジィーの本では逆になっている。
ΦBはPN接合(ゲートーチャネル)のビルトインポテンシャル、Aは定数、VGはVgsのこと,VDはVdsのことである。
VDが、つぎの条件のとき、IDは飽和する。つまり、VDをVDsatより増やしてもIDは増えない。
G2がjFETの基本式である。この式はピンチオフの状態以前で成り立つ。(G1)式で、
Vp=1/A^2
で、これをピンチオフ電圧という。チャネルのドレイン側の幅が=0になったときである。つまり、(G2)式は
Vp>ΦB+VDーVG
になるまでの様子を表していて、
Vp<ΦB+VD-VG
の領域は、表してはいない。この領域では、IDはVDに依存しないことにされている。
VD<<VG+ΦBであるような線形領域ではG2式はG3式のように近似できる。
これによれば、VDとID間の抵抗値をVGで変えられることを示している。これは下図の領域である。
VTをターンオフ電圧とする。IDは流れなくなるVG電圧である。G4となる。
飽和領域でのドレイン電流IDsatは、G2式のVDを、G1式のVDsatに置きかえたときの、ドレイン電流を求めることにほかならない。G5となる。G5のVGにG4のVTをいれれば=0になる。この理論では、IDは飽和領域においてVDに依存しない。VGのみによって決まる。ーー>実際は違う、VDに依存する。
このG5が
Ids(1-Vgs/Vp)^2に相当する式ですね。
(G5)式は変形していくとG8式になり、下のZ3式で
Ip=G0/A^2
Vp=1/A^2
とすれば同じになる。
(G4)式から、
ΦB-VT=Vp
であることがわかる。 つまり、
Vp≠VT
である。ΦB=0とすれば、
Vp=VT
となる。
ΦB-VG=Vp
で、
IDsat=0
となる。
■ジィー本
上のグローブの場合と違って、Vgsは逆符号である。つまり、Vgsとして実際にー2Vをかけたとき、これをVgs=2Vとしている。であるから、本当の値はーVgsになっている。
Z1式が基本式である。
Vds<<Vgs+Vbiである直線領域では、Z1は次となる。
飽和領域におけるドレイン電流は、ピンチオフ点におけるドレイン電流を計算することであり、Z1式でVp=Vds+Vgs+Vbi(初めに説明しておいた)とおけばよい。
Vgs+Vbi=Vp
で、
Idsat=0
となる。
Z3式は、なんと次に近似される。
ID=IDSS(1-(VGS/Vp))^2
jFETの理論式の近似 - SonofSamlawのブログ (hatenablog.com)
■
基本式である(G2)式、(Z1)式は、線形領域でしか使えないものです。つまり、Z式で言えば、
Vp>=Vds+Vgs+Vbi----(1)
(Vgsは絶対値、つまり実際の値(負ではなく正の数)のVds,Vgsで適用できます。 実際Vdsとしてこれ以上入れると、Idは下降していってしまう。だから、(Z3)式では、この点が、それ以上のVdsで維持されることが仮定されている。(Z1)式では維持されない。
(1)の条件は「ピンチオフ」状態と言い、ドレイン側で空乏層がチャネル幅になったときである。ここまでを(G2)(Z1)は表している。それ以降は表せない。この状態はゲートードレインの逆電圧に依存する。つまり、
Vgs+Vds+Vbi
で決まる。もし、Vgsを負の数としているのなら、
ーVgs+Vds+Vi
である。グローブではVGは実際の値で、ジィーでは符号を逆にしている。このため、ピンチオフ状態になるVdsはVgsが大きくなるにつれ減少している(Vds+Vgs+Vbi=Vpの点だから)。
ピンチオフ状態とは、Id,Vdsグラフで、Idが水平になる点である。