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電気回路、回路理論、スタインメッツ交流理論の技法 2

ライター:mpcsp079さん(最終更新日時:2016/3/21)投稿日:2013/9/26

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 複素数の魔力、交流理論の技法 2

  

  

 

 

  交流理論を適応してみる。図1の回路を計算する。

  

                 図1 解析回路

 

■通常の方法では?

  まず、交流理論を使わないでやってみる。信号源Vは正弦波で、電流Iも正弦波であるとする。

 

    V=A*sin(ωt)        (1)

とする。

 

    I=B*sin(ωt+θ)      (2)

となるだろう。

図1の回路の方程式は、

 

  V=R1*I+L1*dI/dt      (3)

 

これに、上の正弦波の式を入れると、

   

A*sin(ωt)=R1*B*sin(ωt+θ)+L1*B*ω*cos(ωt+θ)  (4)

 

これから、Bとθを求めなくてはいけない。これはむずかしい。

 

■交流理論

  つぎに、交流理論でやってみる。

 

V=A*e^(jωt)     (5)

I=C*e^(jωt)      (6)

 

(2)式のθは複素数Cに入っている。(3)式は、

 

A*e^(jωt)=R1*C*e^(jωt)+jω*L1*C*e^(jωt)  (7)

ここでe^(jωt)で割ります。すると、単なる係数Cについての代数方程式となってしまう。

 

A=R1*C+jω*L1*C

A=C*(R1+jω*L1)

C=A/(R1+jω*L1)         (8)

 

ということになる。(8)式はAとCの位相差をも示している。つまりこれが(2)式のθに相当する。Aが実数なら、θはCの偏角である。

  

  θ=ーtanー1(ωL1/R1)

  

  ここで、tan-1はtan(θ)=aのときtan-1(a)=θの意味である。

電流Iの振幅|I|は、

  

  |I|=A/((R1+jω*L1)の長さ)

     =A/(√(R1^2+(ω*L1)^2))    

となる。つまり、Iの振幅とVとの位相差θが求まった。  

この場合、R1のインピーダンスはR1、L1のインピーダンスはjωL1として、抵抗計算をすればいいことになる。インピーダンスとは交流理論に出てくる電圧/電流を表す複素数を言う。そこには振幅と位相差の関係が示されている。 

 

■図的開放  

  交流理論は図的な解法である。

 

  

            図2 交流理論の図

 

  上の問題を図で考える。交流理論は正弦波を図で考える方法である。そもそも正弦波とはωtという角速度でぐるぐる回る動径(フェイザ)を、たとえば図2でいえば、実数軸に射影したものである。交流理論ではこの動径の位置の座標を複素面上で考えるのである。

  

  図2で、Vをまず実数軸上に考える。ここで、もしIも実数軸上にとれば、抵抗R1のこのIによる電圧とL1のIによる電圧は図2のようになる。この2つの正弦波の合成は、時間軸上、つまりこの図の実数軸への射影のみで考えると難しいが、動径で考えるとたやすい。つまり、図のようなベクトルの合成則に従う。つまり、おのおのの成分を足せばいい。これがR1とL1の直列回路に電流Iが流れたときの電圧である。この電圧がVに等しい条件でIを求めるのである。

  

  すると、上の計算になり、Iの大きさとVとの位相差が容易に求まるのである。このように、正弦波をその動径(フェイザ)で考えることにより、さらにその動径を複素面に考え、複素数の演算則を利用することによって、正弦波信号の定常解の算出は容易になってしまう。どんなに複雑な回路でも、システマチックにできるようになる。  

   

  つまり、正弦波を2次元空間での位置と考えることによって、見通しをよくするのである。わけのわからないものでも、上から見ると簡単な構成であることがわかるのである。天才的なアイデアですね(^^

 

■正弦波の和の図的解法

 


               図3 正弦波の和

  図3にうおいて、正弦波の合成について考える。正弦波AとBは、位相差がθである。これを図の右の時間領域でみると難しい。しかし、左の動径(フェイザ)で見ると簡単になる。波形AとBの和は、動径AとBの和が生み出すものだ。

  動径の角度のsinをとってから和を考える(図3の右)のではなく、動径(フェイザ)の段階(図3の左)で和をとってしまうのである。

  これが交流理論の神髄である。動径の座標は複素数であるが、それをそれぞれ足し合わせた結果が和の動径(フェイザ)の座標となる。交流理論ではこの動径(フェイザ)のみを問題とする。

  このようにすると、正弦波同士の和が簡単になるのである。時間波形で和を考えるのではなく、動径(フェイザ)で和をとるのである。