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電気回路、回路理論、スタインメッツ交流理論の技法

ライター:mpcsp079さん(最終更新日時:2016/3/25)投稿日:2013/6/17

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複素数の魔力、交流理論の技法

 

*簡潔で完全な解説ですのでこれをお読みください!

交流理論の完全な証明(スタインメッツの交流理論を証明する)

交流理論の完全な証明(スタインメッツの交流理論を証明する) - SonofSamlawのブログ

 

 

           

                             スタインメッツ

概要

電気工学者なら誰でも使っているスタインメッツの交流理論、しかし根底から理解している者は少ないのです

 

 

   

     図1 ある回路の中の量、電圧Eと電流I

 

1.まえがき

  交流理論では、回路上の電圧、電流は正弦波で変化しているとします。つまり、正弦波定常状態のみを考えます。たとえば、図1のようなものです。ここで電圧Eと電流Iが示されています。このとき求めたいのはEとIの関係です。波形は正弦波でありますから、不明なのはその振幅と位相です。これを図1のように動径の回転で表します。動径は角速度ωで回っています。この動径の横軸への射影がその信号の時間波形となります。しかし、交流理論ではこの時間波形ではなく、図のような平面上の動径で表します。その際、回転はさせないでおきます。つまり、各動径の関係のみを考えます。図1では電圧Eと電流Iの振幅と位相θ1、θ2のみを問題にします。つまり、動径のどれかを基準として、それからの差のみを考えます。

 

  ここまではいいのですが、ここからが難しい。交流理論では、図1の中で示された動径は複素面上を回転しているとするのです。ここがみそで、難しいところなのです。高等数学なのですね。この動径の回転成分は無視して、動径間の関係を計算します。

 

  ここで数学上で最高の公式であるオイラーの公式

 

  e^(jθ)=cos(θ)+j*sin(θ)

 

が出てきます。jは虚数単位√(-1)ですね。つまりですよ、

 

 A*e^(jωt)

 

は、長さAで角速度ωで反時計回りに複素面上を回る動径を表しています。この動径はフェイザと呼ばれます。

 

 

 

2.正弦波の和の時間波形の生成動径(フェイザ、ベクトル)での表現

 


     図2 正弦波の和の動径で表す

 

  図2にうおいて、正弦波の合成について考える。正弦波AとBは、位相差がθである。これを図の右の時間領域でみると難しい。しかし、左の動径(フェイザ)で見ると簡単になる。波形AとBの和は、動径AとBの和が生み出すものだ。

  動径の角度のsinをとってから和を考える(図3の右)のではなく、動径(フェイザ)の段階(図3の左)で和をとってしまうのである。

  これが交流理論の神髄である。動径の座標は複素数であるが、それをそれぞれ足し合わせた結果が和の動径(フェイザ)の座標となる。交流理論ではこの動径(フェイザ)のみを問題とする。

  このようにすると、正弦波同士の和が簡単になるのである。時間波形で和を考えるのではなく、動径(フェイザ)で和をとるのである。

 

 

 

3.複素数の演算

 

    

             図3 複素数の関係

 

  図3で2つの複素数A,B、Cの関係を考えます。証明なしですが次のようなおもしろいことが成り立ちます。θA、B,Cは偏角と言います。

 

C=A*B

とすると、

Cの長さ=Aの長さ*Bの長さ

θC=θA+θB

 

さらにこれから次のことも言えます。

 

B=C/A

とすると、

Bの長さ=Cの長さ/Aの長さ

θB=θC-θA

 

  単なる(?)複素数演算で2次元の座標変換ができるのです。あるフェイザAに偏角θを持つフェイザBを掛け算すると、結果の偏角はθだけ増加しています。

 

4.複素数を回路計算への応用 R,L,Cの電流

 

  

         図4 抵抗R

 

  図4の場合電流Iは、E/Rである。Rを抵抗のインピーダンスという。

 

 

  

         図5 インダクタL  

 

  図5の場合、電流Iの大きさは一般的考察により(微分方程式より)E/(ωL)であり、位相は図1の表式でフェイザ進行方向に対して90°遅れる。つまり電流フェイザIは、電圧フェイザEにより次のように書ける。jは虚数単位である。

 

        I=E/(j*ω*L)

 

ここでjで割るということは前述のように偏角をjの偏角ー90°だけ遅らせることになる。ここで(j*ω*L)をインダクタのインピーダンスZLという。すると、

 

        

       E=ZL*I

と書けるので、これは直流の抵抗計算のようになってしまう。

  

        図6 キャパシタ

 

   図6の場合、電流Iの大きさはE*ωCであり、位相は図1の表式でフェイザ進行方向に対して90°進む。つまり電流フェイザIは、電圧フェイザEにより次のように書ける。

 

         I=j*E*ω*C

 

 ここでjをかけるということは前述のように偏角をjの偏角90°だけ進ませることになる。1/(j*ω*C)をキャパシタインピーダンスZCとすれば、

 

       E=ZC*I

 

となり、直流における計算と同じようになってしまう。

     

5.複素数を回路計算への応用 R,L,C複合の電流

 

 ここでもし、R,L,Cが直列になっていたら、それらの端子電圧フェイザは、

 

ER=I*R

 

EL=I*j*ωL

 

EC=I/(j*ω*C)

 

となる。その和が全体の電圧Eとなる。これら位相と振幅の異なる正弦波の時間領域での和はそれぞれのフェイザ(ER,EL,EC)の複素面上での和になるつまり、

 

E=I*R+I*j*ωL+I/(j*ω*C)=I*(R+j*ωL+1/(j*ω*C))

となり、整理すれば、

 

E/I=Z=R+j*ωL+1/(j*ω*C))

となる。これはフェイザE、Iの関係、つまりインピーダンスZの定義でもある。つまり、直列の場合の合成インピーダンスは、各インピーダンスの和でよい。並列の場合も通常の直流での抵抗計算のようにすればよい。 

 

続き

電気回路、回路理論、スタインメッツ交流理論の技法 2 - SonofSamlawのブログ (hatenablog.com)

 

 参考

交流理論の完全な証明

交流理論の完全な証明 - SonofSamlawのブログ (hatenablog.com)