SonofSamlawのブログ

うひょひょ

オペアンプLM324の位相補償段

ライター:miranda17jpさん(最終更新日時:2014/2/14)投稿日:2013/12/6



 この知恵ノートでは、オペアンプLM324の位相補償段の周波数特性を、初段と合わせた形で解析し、さらに回路シミュレータTINA TIにより周波数特性を計算してみようと思います。
間違い等ございましたら、ご指摘よろしくお願い致します。
青字の部分を追加しました。

 オペアンプLM324解析関連の知恵ノート一覧については、以下の知恵ノートにまとめてあります。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n234431

 図1は、LM324の位相補償部について、要所を抜き出して、自分なりにわかりやすく書き換えました。
  

              【図1】

図2は、図1の位相補償部のモデル図である。
  

  

              【図2】

■Cによる位相補償と周波数特性
 図2において、
・電流は、図の矢印の向きを正とした。
・iは、図1の差動増幅段のgmGm、差動入力電圧をvdとすると、
i = Gm*vd
である。
・Rinは、Q4Q、Q20のコレクタ抵抗とエミッタフォロワQ5のIN抵抗の並列抵抗で、大きな値であると考えられる。
・Rcは、Q9、Q19のコレクタ抵抗とOUT段エミッタフォロワのIN抵抗の並列値で、これも非常に大なものと考えられる。
・Rinの電圧を、viとする。

 点Aにおいて、キルヒホッフの電流則を適用すると、
i = vi/Rin + (vi - vo)sC・・・・①
点Bにおいて、キルヒホッフの電流則を適用すると、
-gm*vi - vo/Rc + (vi - vo)sC = 0・・・・②

 ここで考えたいのは、i - voの関係なので、②を変形し、
-(gm - sC)vi - (1/Rc + sC)vo = 0
vi = {-(1/Rc + sC)/(gm - sC)}*vo・・・・③

 ③を①に代入して、i-voの関係式にする。
i = [{-(1/Rc + sC)/(gm - sC)} / Rin]*vo + {-(1/Rc + sC)/(gm - sC)}*sC*vo
 - sC*vo
 = [-{(1/Rin + sC)(1/Rc + sC)}/(gm - sC)]vo -sC*vo
 = -[{1/(Rin*Rc) + sC/Rc + sC/Rin + (sC)^2}/(gm - sC)]vo
        - {sC(gm -sC)/(gm - sC)}vo
= -[1/(Rin*Rc) + {(1/Rc) + (1/Rin)}sC + (sC)^2 + gm*sC - (sC)^2]*vo/(gm - sC)
= -[1/(Rin*Rc) + {(1/Rc) + (1/Rin)}sC + gm*sC]*vo/(gm - sC)・・・・④
ここで、④について、
上述のように、LM324においては、RcとRinは非常に大きいので、
i = -(gm*vo*sC)/(gm - sC)・・・・⑤
gm >> ωCが成立する場合においては、
i = -vo*sC
vo = -i/sC・・・・⑥
となり、Cは位相補償コンデンサとして機能していることが分かる。

 ここで以下の知恵ノートの、「●CによるNF(負帰還)」で計算した結果と比較する。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n227016
この知恵ノートによれば、
i - voの関係は、
vo(1/zc + 1/Rc)/(1/zc - gm) - Ri*vo/zc(1 + Ri/zc) = i*Ri/(1 + Ri/zc)・・・(1)
ここで、
能動負荷RcとRiは非常に大きいので
1/zc >> 1/Rc
1 << Ri/zc
とすると、(1)は
vo((1/zc)/(1/zc - gm) - 1) ≒ i*zc
vo*zc*gm/(1 - zc*gm) ≒ i*zc
ここで、1 << zc*gmなら、
vo ≒ -i*zc = -i/jωC・・・(2)

となり、このノートで求めた結果⑥と、LM324の知恵ノートで計算した結果(2)は一致することが分かる。

■負帰還の方式に着目した解析
 上記の特性は、以下のように確かめることも出来る。
 図3-1は、中段の小信号等価回路で図2と等価なものであるが、以下の検討をする上でわかりやすいので、こちらを載せました。

 図3-2は、負帰還の方式に着目したモデル図である。
下記の知恵ノートに述べたとおり、負帰還には、利得を安定させ、入出力インピーダンスを調整し、周波数特性を改善する効果がある。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n237475
 この知恵ノートで述べたようにLM324の中段は本来トランスレジスタンスアンプであるが、フィードバック形式での分類では、Rcは∞と近似し、電流-電流アンプとして近似解析するのが妥当であると思える。そうしないと、フィードバックのみでなく、フィードフォーワードのパスが存在し複雑になる。フィードバック電流IoutがRcにも流れて分岐してしまうとともに、Cを通ってiが直接Rcに流れ込むことを考慮しなければならない。簡単なモデルではなくなる。Rcを∞とすれば、Cを流れる電流はIoutのみと出来る。
 現実でも、この効果は出力インピーダンスをべらぼうに大きくしているから、無視できるように設計されている。そして、この出力電流が流れるフィードバック要素であるコンデンサの端子電圧を出力電圧としている
(vo = vi + Iout/sC→vo ≒ -i/sC)。
この仮定は、RcがBJTよりなる電流源の抵抗と3段目のエミッタフォロワの入力抵抗の並列値であることからべらぼうに大きなインピーダンスなので、妥当な近似であると思われる。

 図3-3は、負帰還のブロック図である。
 
図3-2で、Rcを∞と近似しているため、ioは全てiに戻され、全加算されている。
voは、図3-1より、Rcが∞であることから、
vo = vi + io/sC
であることが読み取れるため、図3-3のように書ける。
     

                                       【図3-1】
図3-1は、中段の小信号等価回路で図2と等価なものであるが、以下の検討をする上でわかりやすいので、こちらを載せました。
   

             【図3-2】
図3-2は、負帰還の方式に着目したモデル図である。
下記の知恵ノートに述べたとおり、負帰還には、利得を安定させ、入出力インピーダンスを調整し、周波数特性を改善する効果がある。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n237475
 この知恵ノートで述べたようにLM324の中段は本来トランスレジスタンスアンプであるが、フィードバック形式での分類では、Rcは∞と近似し、電流-電流アンプとして近似解析するのが妥当であると思える。そうしないと、フィードバックのみでなく、フィードフォーワードのパスが存在し複雑になる。フィードバック電流IoutがRcにも流れて分岐してしまうとともに、Cを通ってiが直接Rcに流れ込むことを考慮しなければならない。簡単なモデルではなくなる。Rcを∞とすれば、Cを流れる電流はIoutのみと出来る。
 現実でも、この効果は出力インピーダンスをべらぼうに大きくしているから、無視できるように設計されている。そして、この出力電流が流れるフィードバック要素であるコンデンサの端子電圧を出力電圧としている
(vo = vi + Iout/sC→vo ≒ -i/sC)。
この仮定は、RcがBJTよりなる電流源の抵抗と3段目のエミッタフォロワの入力抵抗の並列値であることからべらぼうに大きなインピーダンスなので、妥当な近似であると思われる。

 

             【図3-3】
 図3-3は、負帰還のブロック図である。 
図3-2で、Rcを∞と近似しているため、ioは全てiに戻され、全加算されている。
voは、図3-1より、Rcが∞であることから、
vo = vi + io/sC
であることが読み取れるため、図3-3のように書ける。


 

 

 図3-2の回路は、負帰還の方式で分類すると、並列-直列帰還となり、良好な電流増幅器になる。
 
 図3-2の回路は、出力電流Ioutをモニタし、そのH倍の電流を入力に帰還させるものである。この回路の場合は、Rcが∞との仮定に立っているため、
(帰還電流) = Iout
すなわち、H = 1である。
Aも電流比であるから、A = gm*Riとなる。
Iout = -gm*vi・・・⑦-1
vi  = Ri*(i + Iout)・・・⑦-2
であるから、

 

Iout = -gm*Ri*(i + Iout)
Iout(1 + gm*Ri) = -gm*Ri*i
Iout/i = -gm*Ri/(1 + gm*Ri)
であるから、gm*Ri = AH >>1であるならば、
Iout/i = -1 = -1/H
が成立し、Iout/iが安定する。
もともとの入力インピーダンスは、Riであるが、
vi = Ri*(i + Iout) = Ri*(i - gm*vi)
vi(1 + gm*Ri) = Ri*i
より帰還がかかった時のインピーダンスは、
vi/i = Ri/(1 + gm*Ri)
となり、入力インピーダンスは、1/(1 + gm*Ri) = 1/(1 + AH)
に減ることが分かる。
つまり入力インピーダンスは、1/gmになり、これをある値以下にしたいのなら、gmをある値以上にしなければならない。gmはコレクタ電流に比例するので、コレクタバイアス電流の下限が決まる。

 図3-2において、Rcは∞と近似している。
すなわち、
Iout = -gm*vi・・・⑦-1
である。また、Ioutは、フィードバックされてiに加算されるため、
vi  = Ri*(i + Iout)・・・⑦-2
また、図3-1より、
Vout = vi + Iout/sC・・・・⑦-3
となることが読み取れる。
⑦-1~⑦-3を解いてVoutとiの関係を求めると、
vi = Ri(i -gm*vi)
vi(1 + gm*Ri) = Ri*i
Vout = vi(1 - gm/sC) = Ri*i(1 - gm/sC)/(1 + gm*Ri)
ここで、gm/sC >> 1およびgm*Ri >> 1が成立するならば、
Vout = -i/sC
が成立するので、⑥式と一致し、Cは位相補償コンデンサとして機能していることが分かる。

 OUT抵抗ROUTは、i=0にし、コレクタに⊿ioutを加えたときのVoutの変化,⊿voutをみればいい。
すなわち、⊿vout/⊿ioutを求めるのである。
⊿ioutを注入しないとき、
Iout = -gm*vi・・・⑦-1
vi = Ri*(i + Iout)・・・・⑦-2
Vout = vi + Iout/sC・・・⑦-3
が成立している。i=0とし、⊿ioutをコレクタに注入するので、この式は次のようになる。
Iout = -gm*vi + ⊿iout ・・・⑦-1-2
vi = Ri*Iout・・・・⑦-2-2
Vout = vi + Iout/sC・・・⑦-3
が成立する。

⑦-2-2と⑦-3から、
Vout = vi + Iout/sC = Ri*Iout + Iout/sC = Iout(Ri + 1/sC)
⑦-1-2と⑦-2-2から、
Iout = -gm*Ri*Iout +⊿iout → Iout(1 + gm*Ri) = ⊿iout
より、
ROUT=⊿vout/⊿iout = (Ri + 1/sC)/(1 + gm*Ri)
gm*Ri >> 1で、
ROUT≒1/gm+1/(sC*gm*Ri)
この結果は、
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n232893
の(G)式に近い。

 

■回路シミュレータによる実験

 ここで、回路シュミレータを使って、実際に上記のようなゲイン特性になるかを検算してみる。
 このオペアンプLM324の初段と位相補償段の要所を書くと、以下の図4のような回路になる。
 けれども、ここままでは、あまりにもゲインが大きすぎて振り切れてしまうので、ゲインのf特の測定は、フィードバックをかけて行う。実際、図4に10mVのDC入力をあたえてみたところ、83M(メガ)V程度まで振り切れてしまった。
 

              【図4】

 図5は、ゲインf特の測定用の回路である。
 2つの抵抗TEST(10kΩ、1kΩ)によって、負帰還をかけている。入力電圧は、±1mVを与えている。
 以下の図5のようにすると、図6より、ちゃんと-10倍のアンプになっていることが分かる。BJT TESTは、エミッタが電流源のエミッタフォロワなので、Q9からの出力電圧を非常に高インピーダンスで漏れなく受けることが出来る。
 おおもとの入力信号は一番左の電圧ジェネレータからの±1mVだが、ゲインのf特は、Vout/Vinを測定して調べる。図中、Vout/Vinは、Avと表している。

 図5の測定用回路において、電流源およびCの設定値は、データシートに合わせた。
初段の電流源は、6μA、Q5のは、4μA、Q9のは、100μAである。
Cは、5pFとした。
 

              【図5】
  

               【図6】
  

              【図7-1】
        

                                           【図7-2】

 図7が
、測定実験の結果である。
●図7-2より、一次傾斜部と、+90度(=-270度)はほぼ一致していることが分かる。これも、上述の予測通りであると言える。
●図7-2より、ゲインが1近辺で収束するところと、位相が0度(=-360度)のところもほぼ一致し、これも予測通りと言える。

 1MHz付近のピークと、8G付近のへこみは、何なのだろうか・・・?
これは、BJTの寄生容量によるものかもしれない。
試しに、以下のようにしてみた。
BJTのパラメータに、
b-c zero bias cap. が 19.7pF
b-e zero bias cap. が 28.3pF
という項目があるのだが、これを両方0pFにしてみた。
すると、以下の図8のような結果になった。
  

             【図8-1】
   

              【図8-2】
 図8より、BJTの寄生容量をなくせば、1MHzのうねりが消えることが分かる。

 さらに、
forward transit time 531ps → 0s
reverse transit time 69ns → 0s
にしてみたところ、以下の図9のボーデ線図が得られた。
   

              【図9ー1】
  

              【図9-2】

(当たり前かもしれないが、)理想的なオペアンプのボーデ線図だと思います。

 計算式上は、上記より、
i = -(gm*vo*sC)/(gm - sC)・・・・⑤
gm >> ωCが成立する場合においては、
i = -vo*sC
vo = -i/sC・・・・⑥
となり、Cは位相補償コンデンサとして機能していることが分かる。
この結果と図9の結果を照らし合わせてみる。
以下の知恵ノートより、
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n236805
Gm = 6μA/(2*4*26mV)
Q9のgm
gm = 100μA/26mV
である。
【結果①】
⑥式成立の境目である、
gm = ωCになる周波数は、122MHzだが、図9-2とほぼ一致していることが分かる。
【結果②】
f >> 122MHzにおいては、約-40dB付近で収束しているが、
⑤式より、
i = vo*gm
vo = i/gm = Gm*vd/gm
より、ゲインGm/gm
Gm/gm = {6μA/(2*4*26mV)}/{100μA/26mV} = 0.0075→-42.5dB
で、これも、図9-2とほぼ一致していることが分かる。
【結果③】
全体ゲインは、
 Av = Gm/ωC
となり、|Av|=1となる周波数Fuは、
 Fu = Gm/2πC = {6μA/(2*4*26mV)}/{2π*5pF}
≒ 0.9MHz
で、これも図9-2と一致している。

 上記の計算におけるBJTのパラメータについては、
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n241361
を参照。