3端子レギュレータ78シリーズの原理
78シリーズの原理の概略を示す
図1 78シリーズの概略図
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12128459047
質問に答えるものである。
参考
3端子レギュレータ 78シリーズの回路解析
3端子レギュレータ78シリーズの回路解析 - SonofSamlawのブログ (hatenablog.com)
シャントレギュレータ431について
シャントレギュレータ431について - SonofSamlawのブログ (hatenablog.com)
■概要
Q1,Q2,R1、R2、R3が主要な部分で、さらにQ3,Q4が加わりバンドギャップ電圧源を構成する。Q3,Q4,Q9により作られた電圧はQ17のエミッタフォロワでバッファーされVoとなる。このVoはR19、R20で分圧されQ6のベースにフィードバックされる。この電圧が上の基本セルで生み出されるバンドギャップ電圧となる。
バンドギャップ電圧源とは、バイポーラトランジスタ(BJT)のVbeと絶対温度に比例する電圧を足し合わせて、温度依存が小さい電圧を作りだす回路である。 この回路の場合、R2,R3の電流がTに比例するように構成されている。1つのVbeによる場合約1.2Vになる。図1の場合、Q3,4,5,6のVbeが直列になっているので1.2*4=4.8VがVrefとして生み出される。つまり、
Vref=Q3のVbe+Q4のVbe+Q5のVbe+Q6のVbe+R2電圧
となる。
■基本セル特性
まずQ1,2から成る部分(ワイドラー電流源)の動作を見てみよう。
図2 簡単化した基本セルの動作
図2に簡略化した基本セルの性質を示す。Q2のエミッタ面積はQ1のそれの10倍程度であるとする。Q2はこのためVbに対してIcは早く上昇するがエミッタ抵抗RのためにVb1より先でではQ1よりIcは小さくなる。
今、図2でVrefを0から上げていくと、Vb=Vb1まではQ1,Q2のコレクタからみた抵抗はQ2の方が大きくなるが、Vb1を超えるとQ2のコレクタから見た抵抗の方が大きくなる。
つまり、Vrefを0から上げていったときVc(Q2のコレクタ電圧)はまず下降し、Vb=Vb1を超えると、Vcは上昇に転じる。この部分を利用してネガティブフィードバック回路を構成する。
この関係が、図1のAとBの関係も同じだ。
Aが上がるーー>Bが上がるーー>Q3のIc増加ーー>Vo減少ーー>A減少
というふうに、NF回路となる。
このNF回路は、Q3のコレクタ電流源IとQ3のIcが同じになったときが平衡状態となる。Q1とQ3が同じBJTで、Icが大きく変わらないならば、Q1とQ3のVbeはほぼ同じなので、R1,R2にかかる電圧はほぼ同じなのでQ1とQ2のIcの比は、R2:R1となる。図2では、Q1とQ2の電流比がR2:R1(N:1)になるようなVbが実際の値となる。
Q10はVccの変動が、基本セル電圧(図1のA)を変化させないようにするためのコモンベース回路を構成している。ベース電圧は大きな変動がないVoとしている。
■ネガティブフィードバックの結果
NFがうまくいって安定したとする。図1でQ1のコレクタ電圧はQ1noVbe+Q7のVbeであり、Q2のコレクタ電圧はQ3のVbe+Q4のVbeであり、これらがほぼ同じであるとすると、R1,R2の電圧はほぼ等しくなるので、Q1,Q2のコレクタ電流の比はR2:R1となることになる。
Q1,Q2のコレクタ電流の比が一定であり、かつQ2のエミッタ面積がQ1のそれの10倍であるとする。もしR2:R1が図2の例のように10:1であるとすると、Q1とQ2のエミッタ電流密度比は100:1となる。今、この比をN:1としてみる。
ここまでを整理するとこうだ。基本セルとNF回路によりQ1とQ2のエミッタ電流密度はN:1になっている。そして、この回路の基準電圧Vrefは4つのBJTのVbeとR2の電圧の和であるということだ。これから、このR2を流れる電流が絶対温度Tに比例することを証明する。BJTのVbeはTの温度係数が負であるので、R2の電圧の正の温度係数で打ち消されるわけである。
■R2の電流について
ここで、エミッタ電流密度の異なるBJTのVbeの差の電圧を考える。Q1はQ2に対してN倍の電流密度となっているとする。BJTのコレクタ電流密度Jcはベースーエミッタ間電圧Vbeで、
Jc=I0*exp(Vbe/Vt)
で表せる。ショックレイの理論。ここで、
Jc:コレクタ電流密度
I0:Vbeに依存しない値(温度Tには強く依存する)
Vt:kT/q
k:ボルツマン定数
q:電子電荷
2つのBJTQ1,Q2のIcがN:1で、さらにQ1とQ2のエミッタ面積が1:Mである場合、Q1とQ2のコレクタ電流密度Jc1とJc2はMN:1の関係になる。つまり、
Jc1=I0*exp(Vbe1/Vt)
Jc2=I0*exp(Vbe2/Vt)
変形すると、
Vbe1=Vt*In(Jc1/I0)
Vbe2=Vt*In(Jc2/I0)
ここでIn(X)はLoge(X)のこと。これから、
Vbe1-Vbe2=Vt*In(Jc1/Jc2)
=Vt*In(MN)=(kT/q)In(MN)
となる。つまり、異なるコレクタ電流密度に対応するVbeの差は、Tに比例する電圧となる。つまり、図1,2のR3の電圧はQ1とQ2のVbeの差の電圧がかかっている。ということはR3の電流もTに比例した電流である。この電流は、図1、2のR2に流れるのでR2の電圧もTに比例する。
k = 1.380 6488(13*10^-23
q= −1.602176565(35)*10^-19
であるから、
k/q=8.63*10^-5
である。
■BG電
R3の電流はTに比例する。つまり、R2の電流もTに比例する。つまりR2の電圧もTに比例する。VbeはTの温度係数が負である(-2mV/℃)。この係数と符号が逆になるようにR3の電圧を設計すれば、足したものの温度係数は小さくできる。1つのVbeについてこれを設計すると、1.2Vという値が出てくる。
図1の場合、Vrefは、Q3,4,5,6のVbeとR2の電圧の和である。この値は約1.2*4=4.8Vとなる。ここで、R20を、
Vref=5*R19/(R19+R20)
となるようにすると、Voは5Vになる。