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電磁気学 分極Pと分極電荷密度、電流

 

ライター:mpcsp079さん(最終更新日時:2015/2/18)投稿日:2015/2/18    
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電磁気学 分極Pと分極電荷密度、電流

 

 誘電体の分極による電荷密度ρb、電流密度Jbについて、下の本から引用する。



■1.2  巨視的方程式

  我々は電荷の集まりにより作られる電磁場を考察することが多い。電荷の集まりのうち最も普通に現れるのは物質である。物質は原子からできているが原子は電磁気の立場から見ると正電荷原子核)とそれをとりまく負電荷(電子)の分布により特徴づけられる。負電荷原子核を中心として、原子、分子の大きさの程度まで広がっている。

 


  電荷の速度をvとすると電荷密度と電流密度は次の関係にある。

        j=ρv

  原子の大きさは極めて小さく(≒10E-8cm)、原子内の電子の速度は極めて速い(≒1000km/s)から、物質による電荷、電流の密度は時間的にも空間的にも激しく不規則に変化する。したがって、これらに起因する微視的電磁界も同様に変化する。しかし、普通観測される電磁界は、このような微視的電磁界ではなく、原始的大きさや周期に比べてはるかに大きな空間、時間領域にわたって平均化された巨視的電磁界である。

 


  例を電界にとると、電界の微視的変化はe(x、y、z、t)で表される。いま任意の1点(x0、y0、z0)を中心に球形の体積Vを考え、この体積は多数の原子を含むほど大きいが、巨視的な立場からは無限小とみなし得るほど小さく選ばれているとする。このような体積Vを巨視的微小体積と呼ぶ。eを体積Vにわたり平均したベクトルを点(x0、y0、z0)に与えて新しいベクトルEを作る。すなわち、

   

  E(x0、y0、z0)=(1/V)∫(V)e(x0、y0、z0)dV -(1.9)

半径を一定にしたまま、Vの中心を移動させていくと、空間のすべての点でEが定義される。このようにして定義された新しいベクトル場Eを巨視的電界と呼び、eからEを求める操作を巨視的平均操作という。

 


■1.3現象論的Maxwellの方程式

   物質中には一般に2種類の電子が存在する。1つは特定の原子核に弾性的に結合されている電子で、束縛電子と呼ばれる。他は特定の原子核に属さず、物質中を自由に移動できる電子で、自由電子と呼ばれている。

   前節で定義した巨視的電荷・電流は束縛電子に起因する部分と、自由電子に起因する部分に分けられる。それぞれ添え字b、fをつけると、
ρ=ρb+ρf
 J=Jb+Jf------(1.13)


  次にρb、Jbを物質の微視的構造に関係づけることが必要である。
 電磁場が加わると束縛電子は平衡位置から変位する。簡単のために物質を1個の束縛電子をもつ原子の集まりと考えよう。原子の位置は原子核の位置で指定することができ、その空間分布は巨視的密度Nにより表せる。ただし任意の点PにおけるNの値は、点Pを中心とする巨視的微小体積Vをもつ球に含まれる原子の数をVで割ったものと定義する。各原子の内部状態は原子核に対する電子の位置と速度により決まる。
原子核を原点とした電子の位置をベクトルsで表すと、多数の原子間の相互作用のためにsと∂(s)/∂tは原子ごとにかなりことなった値をとるだろう。しかし、ここでは巨視的微小体積V内の原子はすべて巨視的平均値に等しい同一のsとs’(≜と∂(s)/∂t)をもつという理想化を行なう。

 


  このように理想化された物質中の1点Pにおける巨視的電荷、電流密度を求めよう。図1.3のようにPを中心とする巨視的微小球Vを考え、その表面積をaとする。図中いくつかの原子が示されているが、これらの原子はつぎの2種類に分類できる。

 (1)変位ベクトルが交わらないもの(原子核が領域Ⅰの内部にあるもの)。
 (2)変位ベクトルがaと交わるもの(原子核が領域Ⅱの内部にあるもの)。

  


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■筆者の注

★図1.3での注意点

上に書いてあるように、

原子核を原点とした電子の位置をベクトルsで表すと、多数の原子間の相互作用のためにsと∂(s)/∂tは原子ごとにかなりことなった値をとるだろう。しかし、ここでは巨視的微小体積V内の原子はすべて巨視的平均値に等しい同一のsとs’(≜と∂(s)/∂t)をもつという理想化を行なう。」

  

  これにより、図1.3の中の各原子のsはすべてほぼ等しくしてある。しかし、まったく等しいわけではないと思われる。このことは、各電子がいい加減な方向をもつことはない、ということでありけして一定であるということではない。もし、一定であれば式(1.14)はゼロになってしまう。言いたいことは、s、s’、Nの変化が連続であると仮定したということだと思う。個々がいいかげんな方向と大きさを持つことはない、という仮定である。つまり、この中の電子のs、s’、原子密度Nは一定ではないが、微小領域なので一定に近似してある。傾きはゼロではない。

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  a内の電荷の変化に寄与するのは第2の原子である。面aの微小面積daを底としてaに垂直な筒により領域Ⅱを切り取ると、この筒の高さはs・ν(ν(にゅー)は面aの単位法線ベクトル)となり、この筒に含まれる原子は同一のsをもつと考えてよい。したがってda点における原子密度をNとすれば、a内の電荷の合計をVで割ったもの、つまり、巨視的電荷密度は、
ρb=(e/V)∫(a)Ns・νda=e(div(Ns))  ーーー(1.14)
 (a内に入ってきた電子ーa内から出て行った電子)
最後の式は、ガウス則からでてきたもの。

 


  sは変位ベクトルの巨視的平均であるから、式(1.9)に関連して述べたのと同じ理由で、一種の巨視的場を形成している。-Nesなるベクトル場を物質の電気分極といいPで表す。従って式(1.14)は、
ρb=-divP
 P≜-Nes--------------(1.15)
となる。Pは、原子の双極モーメントp≜-es(双極モーメントの正の向きはsとは逆にーから+に向かう)に原子の密度を乗じたものであるから、物質の単位体積当たりの電気双極モーメントという物理的な意味を持っている。式(1.15)からわかるようにρbはNまたはsが空間的に変化するときに限ってゼロでなくなる。


  巨視的電流密度を求めるには図1.4を考える。s’に垂直な微小面積をdaとすると、daを底として高さがs’dtの筒内に存在する電子はdt時間後にはdaを通って筒外に出てしまう。したがってdt時間にdaを通過する電荷量は-eNs’dtdaとなり、単位時間に単位面積を通過する電荷量、つまり電流密度は
Jp≜-Nes’=∂P/∂t----------(1.16)