伝導帯の状態密度: 石くれと砂粒の世界 (webry.info)
より引用
伝導帯の状態密度
前回、
伝導電子の数=伝導帯の状態密度×エネルギー分布
という式から伝導電子の数が計算できることを説明しましたが、今回はこのうち、伝導帯の状態密度の計算を行ってみましょう。状態密度DはエネルギーEの関数で、単位体積当たりのエネルギーEをもつ状態の数で定義されます。
自由電子近似でエネルギーEは
(1)
と表されます。ただし波数kは3次元で考える場合にはベクトルで
と表されます。各成分は連続的な値をとることはできず、
のようなとびとびの値しかとれないことは以前に説明した通りです。これをkx、ky、kzを座標軸にとって描くと、図のようになります(3次元で描くのは難しいので、kx、kyの2軸で示しました。本書(*)にも同様の図面が掲載されています)。
エネルギーEは(1)式の通りk2に比例するので、図の球面(円周)が等エネルギー面を示します。そこでこの球面における状態の数を求めることになります。実際には微小なエネルギー幅ΔE をとり、このエネルギー幅のなかでは状態の数は一様と考えてEとE+ΔEの間の状態の数Nを数えます。これは図のようにkとk+Δkで囲まれる球殻のなかのkの点を数えることに相当します。半径kの球の体積は
です。
この場合、1辺が2π/aの立方体の中に1つの状態があるので、上記球のなかの状態の数は
となります。求める状態密度は、上記のEに対する球の体積とE+ΔEに対する球の体積から引いたものですから、次式で表されることになります。
この式で、ΔE/Eが小さいとして
いう近似公式を使い、さらにΔEの2乗の項は小さいとして無視すると
が得られます。したがって
です。状態密度D(E)は単位体積当たりですから
となります。ここでは立ち入りませんが、電子の量子状態にはスピンというものがあってこれは2種類あるため、スピンを考慮すると状態密度はさらに2倍になります。
この結果は(1)式という簡単な関係を使って導きました。実際にはEとkの関係はもっと複雑ですが、ここで求めた状態密度は半導体のなかの電子の数を見積もるのには十分よい精度をもっており、実際によく使われています。
(*)植村泰忠、菊池誠著、「半導体の理論と応用(上)」、裳華房
伝導電子の数=伝導帯の状態密度×エネルギー分布
という式から伝導電子の数が計算できることを説明しましたが、今回はこのうち、伝導帯の状態密度の計算を行ってみましょう。状態密度DはエネルギーEの関数で、単位体積当たりのエネルギーEをもつ状態の数で定義されます。
自由電子近似でエネルギーEは
(1)
と表されます。ただし波数kは3次元で考える場合にはベクトルで
と表されます。各成分は連続的な値をとることはできず、
のようなとびとびの値しかとれないことは以前に説明した通りです。これをkx、ky、kzを座標軸にとって描くと、図のようになります(3次元で描くのは難しいので、kx、kyの2軸で示しました。本書(*)にも同様の図面が掲載されています)。
エネルギーEは(1)式の通りk2に比例するので、図の球面(円周)が等エネルギー面を示します。そこでこの球面における状態の数を求めることになります。実際には微小なエネルギー幅ΔE をとり、このエネルギー幅のなかでは状態の数は一様と考えてEとE+ΔEの間の状態の数Nを数えます。これは図のようにkとk+Δkで囲まれる球殻のなかのkの点を数えることに相当します。半径kの球の体積は
です。
この場合、1辺が2π/aの立方体の中に1つの状態があるので、上記球のなかの状態の数は
となります。求める状態密度は、上記のEに対する球の体積とE+ΔEに対する球の体積から引いたものですから、次式で表されることになります。
この式で、ΔE/Eが小さいとして
いう近似公式を使い、さらにΔEの2乗の項は小さいとして無視すると
が得られます。したがって
です。状態密度D(E)は単位体積当たりですから
となります。ここでは立ち入りませんが、電子の量子状態にはスピンというものがあってこれは2種類あるため、スピンを考慮すると状態密度はさらに2倍になります。
この結果は(1)式という簡単な関係を使って導きました。実際にはEとkの関係はもっと複雑ですが、ここで求めた状態密度は半導体のなかの電子の数を見積もるのには十分よい精度をもっており、実際によく使われています。
(*)植村泰忠、菊池誠著、「半導体の理論と応用(上)」、裳華房